「子どもを母乳で育てたい」との亡き母の想い、女性20人以上が協力。

2009/12/03 11:43 Written by Narinari.com編集部

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長い時間をかけて自分の胎内で育み、お腹を痛めて出てくる我が子に、母親は惜しみない愛情を注ぎたいと願うもの。出産後に赤ちゃんと初めて対面したときには、多くの母親が幸せを感じるはずだ。しかし、今年1月に男の子を出産した米国のスーザン・グッドリッチさんは、不幸にも出産直後に命を落としてしまった。 

当時、46歳だったスーザンさんは男の子のモーゼスちゃんを出産した際に、羊水塞栓症という珍しい症状に陥る。これは、出産の際に羊水が母体の血中に入り、アレルギー反応を起こした状態になるもので、スーザンさんは回復することなく、出産から11時間後に亡くなった。夫のロビーさんはショックを受けると同時に、妻が命をかけて生んだモーゼスちゃんをどのように育てていこうかと悩むことになる。

カナダ紙ナショナル・ポストによると、スーザンさんは生前、自らの母乳提供を含め、他人の子どもの世話もしていたそう。ロビーさんは、そんな妻が「母乳による育児」を最も重視していたことを知っており、その遺志に従うべく、モーゼスちゃんを育てるための母乳の確保に悩んだ。

病院に掛け合ってみると、ロビーさん一家が住むミシガン州マルケットから700キロ離れたカラマズーの母乳バンクを利用すれば、取り寄せることができると分かった。到着までの時間は注文から2日間、価格は1オンス(約28グラム)につき5ドル(約440円)と、決して良い条件とは言えないが、ロビーさんはこの母乳バンクからの購入を決める。

そして母乳が届くのを待っているときのこと。家族の友人であるローラ・ヤノウスキーさんから、ロビーさんはある申し出を受ける。それは「モーゼスちゃんを、自分の母乳で育てたい」というものだった。

また、米ニュースサイトのHuliqによると、やはり友人のニコレッタ・フレイアさんも、地元にある母乳養育支援グループに働きかけ、モーゼスちゃんへの母乳提供を要請。すると提供を希望する女性が20人ほど集まり、ロビーさんも女性たちの協力を受けることにした。

女性たちの行動は素早く、提供が決まった次の日の朝までにはロビーさん宅への訪問スケジュールを準備。自分たちの母乳が安全かを調べるため、医師による検査もすぐに行ったという。こうして、女性たちの訪問はスーザンさんが亡くなった3日後から始まり、朝9時から夜8時まで、計6回の授乳が現在まで続いている。

ロビーさんは女性たちに感謝しきり。また、思わぬ交流の広がりはスーザンさんが亡くなったショックも薄めてくれたようで、「死と哀しみに包まれるというよりは、生命と愛に満ち溢れている」(ナショナル・ポスト紙より)と語っている。モーゼスちゃんも20人の“母親”の母乳によって、順調に育っているそうだ。不幸中の幸いというべきか、周囲の大人たちが協力して子どもの世話をするという、昨今は失われがちな関係性を築くロビーさん一家。多くの愛情を受けるモーゼスちゃんは、きっと元気に成長してくれるに違いない。

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