英国海軍が隊員を「PSP」で教育、本を読まない世代の学力アップを狙う。

2009/11/28 16:39 Written by Narinari.com編集部

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外出中でも楽しめ、持ち運びにも便利な携帯ゲーム機。普通にゲームを楽しむだけでなく、通信機能を使って仲間と一緒に遊んだり、音楽や動画の再生をしたりと、特に若者にとっては必須アイテムになりつつある。ゲームを遊ぶ以外にも教育関連、生活関連のソフトも充実してきており、いろいろなシーンで使えるのも強みだ。英国海軍はそんな携帯ゲーム機の便利さと人気に目を付け、海上で手軽に勉強してもらおうと隊員にソニーの「PSP」を配布し、そのための教育ソフトまで開発した。

英紙デイリー・テレグラフによると、ハンプシャー州にあるコリングウッド海軍戦術学校では、生徒の4分の1の成績が落ちていることを重視。全体の教育強化を目指し、携帯ゲーム機を活用するアイデアを思いついた。トレヴァー・プライス司令官は「本を読むことが、今や“つまらなくて退屈”と思われていることを前提に、プロジェクトに取り組んでいる」と、その意図を説明する。本から学ぶことに慣れていない若い世代に意欲を持たせるために、このプロジェクトが発案されたというわけだ。

英国海軍は手始めに駆逐艦リバプールの乗員に「PSP」を230台配り、プロジェクトの試験運用をスタート。気になるソフトの中身は「数学、電気工学や電子理論、電子機器や武器の仕組みをカバーする」(英紙ポーツマスニュースより)エンジニア向けの内容で、図を使った解説ビデオがメインのようだ。プログラムを開発したマーク・ウィリアムズ少佐は、「多くの船で与えられる1人のスペースは非常に狭い」(英紙タイムズより)と、限られた場所でも勉強ができる有意性を強調している。試験運用では、ほとんどの隊員がゲーム機の扱いに慣れていることもあり、今回のプロジェクトは好評だったそうだ。

また、英国海軍が「PSP」を採用した理由にはもう一つ大きなポイントがあり、「とにかく器材を壊すと評判の水兵にとって、衝撃への耐久性を重要視」したという。タイムズ紙では実際にソニーの関係者がゲーム機を壁に投げて耐久性を示し、衝撃に強い「PSP」に決めたいきさつも紹介している。自由時間には持ち込んだ「PSP」のソフトでゲームを楽しむことも許可され、これも人気を得ている一因となっているようだ。 

今回のソフトにかけた開発費用は5万ポンド(約714万円)、それに「PSP」の配布する台数分の本体購入費が上積みされることを考えると、決して安い投資ではない。しかし、海軍関係者は長いスパンで見れば効率アップによる学力強化が期待できるだけでなく、これまでの訓練の運用に比べて1時間当たり200ポンド(約2万8,000円)のコスト削減にも繋がると、「PSP」の導入は英国海軍にとってメリットが大きいと見ている。今後は、ほかの艦船でも順次導入を進める予定で、当初の配布では「ピンクの本体は拒絶された」ことから、ブルーの「PSP」で統一していくようだ。

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