パートナーの名前は「ベーコンの味」、“言葉の味”を感じる男性。

2009/11/20 14:13 Written by Narinari.com編集部

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英国に“言葉の味”を感じる男性がいる。海外のみならず、日本のテレビ番組などでも取り上げられたことがあるこの男性は50歳のジェームズ・ワナートンさん。“言葉の味”がわかるのは、共感覚と呼ばれる働きによるものだ。  

共感覚は、刺激を受けた際に生じる通常の感覚のほかに、別の形での感覚も生じる知覚現象のこと。例えば、字を見ると同時に模様が浮かんできたり、音を聞くと色を感じたりと、直接働く五感以外に別の感覚を引き起こす現象だ。

ワナートンさんがこの感覚に気付いたのは4〜5歳の頃、学校集会で神に祈りを捧げていたときのこと。会場のホールがどのようだったのか、どのような言葉だったのか、先生が誰だったのかなど、そのときの状況はよく覚えていないが、「祈りがベーコンの味だった」ことはしっかりと記憶に残っているという。

小さい頃の記憶は、こうした味にまつわるものが多いというワナートンさん。以来、言葉を耳にするたびに、いろいろな味を感じてきた。味は単語自体だけでなく、音にも影響されるそうで、「フランス語ならほとんどが目玉焼きのカリカリに焼けた部分の味、ドイツ語はマーマレードの味」(英紙デイリー・メールより)といった具合だ。これについてワナートンさんは「たぶん、のどの音が関係してるんだろう」と分析する。

しかし、こうした変わった感覚によって、苦労したことも多かった。ワナートンさんは単語を聞くだけでなく、読むときも同じ感覚を覚えることから、読書をすると「味に気が行って、理解するのに読み直さなくてはならない」ほどで、新聞だと「英紙サンや英紙ミラーは味が圧倒的すぎて“最悪”」(デイリー・メール紙より)。また、大学では経済学を専攻したが、難しい話をしているときでも食べ物の味を感じてしまい、集中できなかったことから、「いくつかの講義は完全に時間の浪費だった」(英放送局BBCより)と振り返る。

さらに人の名前を聞いても同様で、その味によって好みの判断をすることも。当然、恋人選びにも大きな影響を与え、「“ヘレン”という名前は、粘っこい感じで絶対付き合えなかった」(デイリー・メール紙より)という。ちなみに、現在ワナートンさんにはパートナーがいるが、彼女の名前“ジャネット”は「ベーコンの味」(英紙デイリー・エクスプレスより)でお気に入りだ。ほかにも英国のゴードン・ブラウン首相は「泥とマーマイトが混ざったようなゴミの味」、トニー・ブレア前首相は「乾いたココナッツの風味」、ジョージ・ブッシュ前米大統領は「パイに乗った皮つきのジャガイモ」の味らしい。

毎日、こうした感覚に捉われているワナートンさんだが、「この感覚を永久に取り除きたいとは思わなかった」(BBCより)と、それほど悩んではいない様子。というのも、何かを食べるときに、名前から味わったあと、実際に食べて本当の味を知るという「1粒で2度おいしい」体験ができるためだ。

ワナートンさんは現在、英国共感覚協会の会長を務めている。多くの人にこうした感覚を知ってもらうため、忙しい日々を過ごしているそうだ。

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