39歳で陸軍初入隊、その理由は「ガンと闘う妻の医療保険のため」。

2009/10/22 13:57 Written by Narinari.com編集部

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現在、オバマ政権が医療保険改革に取り組んでいる最中ということもあり、ニュースでも頻繁に取り上げられていますが、米国の医療制度は本当に複雑です。

日本のような国民健康保険がないため(低所得者や高齢者、そしてハンディキャップを持つ人々には公的保険がある)、多くの市民は別の方法で保険に入るしかありません。その中でも一般的なのは、雇用者から提供される保険、いわゆる組合保険です。これには雇用されている人物の配偶者や子どもなども加入することができます。

しかし、この組合保険も面倒で、勤め先を変えるたびに保険会社も変えなければいけません。しかも、突然雇用者から解雇を告げられた場合などは、いきなり家族全員が医療保険未加入者となってしまいます。無職の場合、個人医療保険というオプションもありますが、これに加入するにも、いろいろな制限があったり、高額だったりと、なかなかハードルが高いのが実情です。

さらに最近は不況のために職を失う人々が多く、米国民の6人に1人が保険未加入の状態だとも伝えられています。

ウィスコンシン州にお住まいのビル・クロードさん(39歳)も、今年3月に20年間勤めていた会社から解雇を通告され、定収入はおろか、家族全員(妻と娘2人、息子1人)の医療保険も無くなってしまいました。しかもクロードさんの奥さんはこの数年間、子宮がんと戦っており、転移の可能性も高いため、抗ガン剤治療を続けないと命にも関わります。

しかし、高額の医療費を失業状態の個人が負担するのは無理な話。クロードさんは新しい職場を探し続けましたが、その甲斐むなしく仕事は見つかりません。そこで、クロードさんは5月のある日、とある「キャリア」に最後の望みをかけました。それは「陸軍に入ること」。

米国の軍に所属すると、いろいろな福祉手当が得られるのですが、そのひとつに医療保険もあります。ただし軍人となれば命にも関わる仕事。しかも彼の年齢を考えると、入隊時の過酷なトレーニング(ブート・キャンプ)について行けず、すぐに除隊される可能性も……。米陸軍の入隊年齢制限は現在42歳ですが、30代後半での入隊はかなり珍しいのです。

それでもクロードさんには、ほかの選択肢がありませんでした。そして辛いブート・キャンプを見事に乗り越えた彼は、今月からケンタッキー州の基地で働くことになり、医療保険も入隊直後に登録することができました。ただし、医療保険がカバーできたとはいえ、クロードさんはこれから4年間、病気の奥さんと離れて暮らすことになります。それでも、彼女のガンが完治する日がくれば、この辛い日々もきっと意味のある時間になることでしょう。

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