公営アパートを23年でベルサイユ宮殿風に、壁紙変えたらスイッチオン。

2009/10/20 13:32 Written by Narinari.com編集部

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立派な作りの部屋でも狭い1室でも、住まいとなる家は誰にとっても生活基盤となる場所で、貴重なプライベート空間でもある。インテリアの配置、色、模様に気遣い、好きなグッズを飾ったりして、自分が快適に落ち着いて過ごせるように工夫している人は多いだろう。そのこだわり具合やセンスはさまざまだが、英国の公営アパートに住む男性は、味気ない壁紙を変えたところでスイッチが入り、家中の壁や天井などを自ら改装し始めた。淡々と1人で取り組んで23年、ほとんど拾いものを活用したという改装作業が終わり、家の中はフランスのベルサイユ宮殿のようなゴージャスな作りに生まれ変わっている。

英南部サウサンプトンにある公営アパートの9階に、エイドリアン・リーマンさんが奥さんと引っ越してきたのは1984年のこと。2年ばかり生活を続けたある日、彼は家の壁紙に不満を感じたそうだ。「(壁紙が)ほんとにひどかったんだ」(英紙デイリー・メールより)と話すリーマンさんは、自分の手で改装を開始。壁紙を張り替えるだけでなく、パネルを使って飾りも入れるといった具合に凝り始めると、リーマンさんは壁だけでは収まりが付かなくなり、家全体に手を入れることにした。

「一旦始めてしまったら、終わりまで止められない性格」(英紙デイリー・テレグラフより)と自らを分析するリーマンさん。元シェフで、デザインや建築の勉強を一切したことがなかったにも関わらず、持ち前の性格が災いして作業が止まらなくなり、リーマンさんも「当時、実は始めなければ良かったと思った」という。それでも、もともと芸術を好むリーマンさんは、壁や天井だけにとどまらず、暖炉やテーブルといった家具にまで装飾を施すようになった。

「多少、特別な材料を買った」そうだが、そのほとんどは捨てられていた木材や、チャリティーショップで見つけたモノを活用して作られ、材料費は「実質ただ」(デイリー・メール紙より)。しかし、大きなモノから小道具までを工夫して利用した結果、リーマンさんの家は、「悪名高き贅沢な宮殿」のベルサイユ宮殿を思わせる、立派な室内へと変貌を遂げた。実際にはベルサイユ宮殿に行ったことがないというリーマンさんだが、その自慢の造りに「ちょっと狭いけど、ベルサイユ宮殿と同じだろ」と胸を張る。

ただ、「23年の時間を費やした結果に満足か」と問われれば、なにやら思うところがある様子。「必ずしも自分がしたかった形ではないんだ。でも、年を取りすぎてしまったから」(デイリー・メール紙より)と、59歳のリーマンさんは多少の無念さを滲ませている。それでも8歳年上の妻、アネットさんは夫の仕事ぶりに「彼の行動を誇りに思う。彼には大きな才能があったのよ」と絶賛。夫が作り上げた空間の中で、充分に2人の世界を満喫しているようだ。

何はともあれ完成を迎え、後はつつがなく余生を……と言いたいところだが、大きな問題が1つ残されている。それは、この家が公営住宅ということだ。住み続けている分には良いが、仮にリーマンさんが今後引っ越しをする場合には、「家の中を元の状態に戻さなければならない」と決められている。知らなかったわけではないだろうが、これだけの時間をかけて変えてしまった室内を戻すのは、リーマンさん曰く「もはや不可能」。そんなリーマンさんは、「もしここが民営化されれば、この小さな宮殿を買いたいんだけど」(デイリー・テレグラフ紙より)と話している。

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