「家のない少女」設定は不適切? 米国で人気の人形シリーズめぐり議論。

2009/10/10 20:27 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


昔から小さい女の子に人気のおもちゃとして定番のお人形。リカちゃん人形やバービー人形で小さい頃に遊んだという女性も多いだろう。これらに共通しているのは、家族や友人の人形も存在し、人物設定が細かく決められている点。これにより、服の着せ替えで自分好みの女の子に仕上げる楽しみだけでなく、シリーズ全体が作り出す世界観に奥行きを持たせることができるというわけだ。

そうした人形シリーズのひとつ、米国で女の子たちに大人気の「アメリカン・ガール」が、ちょっとした物議を醸している。同シリーズの中に、「家のない(ホームレス)少女」という設定の女の子がいるためだ。

「アメリカン・ガール」は1986年から販売されている人形シリーズで、いろいろな時代の“米国の女の子”をモチーフにしたもの。主人公と周囲のキャラクターとの関係性やバックボーンは出版される本で物語として説明され、遊びながらにして文化や歴史的背景が学べると、大人からも評判が良い玩具だ。1988年にはバービー人形を生みだしたマテル社に買収され、現在はバービー人形の売り上げが落ちる中でも「アメリカン・ガール」の人気は衰えず、同社の看板商品のひとつとなっている。

いろいろな時代ごとに主人公が設定されている「アメリカン・ガール」はいくつものテーマのシリーズが生みだされているが、今回話題になったのは、今年発売された「Chrissa Girl of the Year 2009」シリーズだ。現代の状況を反映したこのシリーズで、主人公のクリッサ・マクスウェルは“いじめられる子ども”という設定。そんなクリッサと一緒に励まし合うのが、友人の女の子のグウェン・トンプソンなのだが、このグウェンという女の子、父親が家庭を捨てたためにホームレスの生活に転落、仕事のない母親と車で寝泊まりする生活を送り、何とか避難所のアパートに転がり込むという、子ども向けにしてはシビアな設定になっている。

このグウェンの設定に対して先日、米紙ニューヨーク・ポストのアンドレア・ペイサー記者が疑問を呈し、米メディアに波紋を広げた。この中でペイサー記者はシリーズのコンセプトを批判。さらに、ホームレスという財政的に苦しい人々をテーマにした人形が、95ドル(約8,400円)で売られ、小道具も揃えるとさらにお金がかかる点を「法外に高価」「間違いなく、メッセージが混同している」と容赦ない。そして、ペイサー記者は子どもが遊ぶおもちゃにも関わらず、父親の問題、車で寝るという設定を入れる必要があるのかと問題提起している。

この記事が掲載されると、数々の米メディアが反応。米紙ワシントン・ポストはペイサー記者のほか、「批評家のほとんどが、ホームレス人形を95ドルで売ることに皮肉を示した」と紹介している。しかし同時に、こうした見方について「このシリーズが始まって約1年近く経つが、ほとんどはこの本を読んでいなかっただろう」と皮肉を返し、「『アメリカン・ガール』に私(=ワシントン・ポスト紙の記者)は、子どもたちに“知る機会”を与えようと努力している印象を抱いている」と擁護の構えを見せた。

また、米紙シカゴ・サンタイムズは、「アメリカン・ガール」がホームレス問題やいじめに取り組む団体に、多くの寄付や援助を行っていることを紹介。やはりペイサー記者のような見方は一方的との論調で伝えている。

実際には「子どもが社会の違う一面を知るのはいい考え」との購入者の声も多いよう。小さな子どものうちに、社会の現実を知らせるのが良いのかは判断が難しいところだが、良くも悪くも“話題の商品”になったことは間違いなさそうだ。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.