70年で切手200万枚収集、コレクター死後に家族は「見たくない」と競売へ。

2009/10/08 21:01 Written by Narinari.com編集部

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フィギュアやカードなど、自分が好きになったモノを1つでも多く集めようとするのがコレクター。中でも購入単価が比較的安いモノから有り、人から送られて来たり、多くの種類が発行されたりと、手軽に始められる切手収集に手を出した経験がある人もいるだろう。英国には70年間にわたって切手の収集を続け、計200万枚もの切手を所有するに至った男性がいたのだが、最近帰らぬ人となってしまった。貴重な切手のコレクションの数々は、遺された家族にとって大切な思い出の品になる――かと思いきや、コレクションの過程で家族は多大な犠牲を払ってきたようで、「二度と切手を見たくない」と、競売に出される運びになるという。

亡くなったアラン・ロイさんは、切手に人生を捧げた男。子どもの頃から始めた切手収集は、大人になってもやめることなく続き、仕事も郵便局員の道を選んだ。ロイさんのコレクションは多くの種類を集めるというよりは、ひたすらあらゆる切手を自分の手元に集めるのが特徴。「質より量」といった集め方で、コレクションの枚数は「英国の切手だけで100万枚近く、アイルランドが50万枚、それ以外の世界の切手が40万枚」(英紙デイリー・メールより)にも上るそうだ。中にはオリンピックやワールドカップのときに発行された珍しい切手もあるというが、日常でよく使われる切手も集めていたため、同じ切手もたくさん含まれている。

それだけの枚数を集めながらも、切手は細かく袋や箱へ分けられ、キッチリと整理されていた。きれいな状態で保管していたのは、ロイさんの熱意の証といったところか。

それにしても、ロイさんは、どのようにしてこれほどの枚数を集められたのだろう。娘のジャネット・ドーレルさんによると、「父は世界中のあらゆるツテを頼って、使用済みの封筒を送ってもらっていた」そうで、郵便局員としての地位を存分に活用していた模様だ。

そうして集まった200万枚の切手だが、ロイさんは将来の資金を得るために、徐々に売却していようと思っていた。ところが実行に移せぬまま、ロイさんは最近76歳で他界。途方もない時間をかけ、ロイさんの情熱が詰まった大量の切手コレクションは、ドーレルさんの「もう二度と切手は見たくない」との意向に沿い、売却する方向で話が進められている。

英紙タイムズによると、ドーレルさんは子どもの頃から父親に巻き込まれ、嫌な思いをしてきたそう。「私は切手に囲まれて育ったのよ」と、切手から離れない思い出にうんざりした様子だ。次々と世界から送られてくる切手を封筒からはがす作業など、ロイさん1人ではさばくことができず、ロイさんの妻やドーレルさんが駆り出されるのは日常茶飯事だったという。

そしてドーレルさんの結婚後、使っていた部屋をすぐに切手で埋め尽くしたロイさんは、「母だけでなく、よく私の双子の娘まで手伝わせたのよ」とドーレルさんに言われる始末。そんな“犠牲の思い出”がいっぱい詰まった切手に対し、ドーレルさんは父親の情熱を認めつつも、これ以上身近には置いておきたくないとの気持ちになってしまったようだ。

専門家も「個人としては最大級のコレクション」と評価される200万枚の切手。普通に市場に出すと相場が崩れる可能性があるとの判断で、大まかに箱や袋に分けた状態で、11月28日から競売にかけられることになった。あまりの数の多さに、競売主催者のデイビッド・エリオット氏は「カタログ作りは不可能で、正確な値段が付けられない」(タイムズ紙より)と値付けは現実的ではないとしている。

また、切手雑誌編集者のヒューゴ・ジェフリーズ氏は「買い手にはギャンブル」としながらも「中に貴重な切手がある可能性は大いにある」(デイリー・メール紙より)と語っている。「切手は数万ポンド(1万ポンド=約140万円)になり得る」(デイリー・テレグラフ紙より)とされるコレクション。すべて売り払うことができれば、これまでの手間賃として、少しは家族の苦労が報われるのかもしれない。

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