ダイバーが見つけた128年前の懐中時計、刻まれた名前をたどり子孫に返却。

2009/08/20 21:49 Written by Narinari.com編集部

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ふと落とし物を見つけたとしても、普通は警察に届けたあとは、持ち主の元へ還ることを願うのみ。拾った場所のそばの住所が書いてあるなど、明らかに持ち主に届けられる場合は別だが、そうでもない限りは、自ら“持ち主捜し”をすることは稀だ。しかし、ある英国人ダイバーは、海の中で拾った古びた懐中時計に興味を持ち、“持ち主捜し”を始めた。歴史に詳しい人物の協力も得ながら埋もれた歴史と家系をたどり、懐中時計が海に落ちてから128年の時を経て、持ち主の子孫に無事返却することになったという。

このダイバーは、ウェールズ沖の海底でダイビングをしていたリッチ・ヒューズさん。砂の間に輝くものを見つけたヒューズさんが手を伸ばして拾ってみると、それはキラリと光る懐中時計だった。懐中時計には「Richard Prichard(リチャード・プリチャード)」「1866」「Abersoch North Wales」と、名前、年、地名と思われる文字が刻まれており、ヒューズさんは「すぐにリチャード・プリチャードという人物について、考え始めた」そうだ。

そして、ヒューズさんは自らの手で、もとの所有者に時計を還そうと決意。インターネットを駆使してプリチャード氏の痕跡を探し始める。1866年当時の懐中時計は価値があるモノだと判っていたヒューズさんは、プリチャード氏が船の船長か司令官クラスの人物であったと推測。過去の船について検索すると、1881年にウェールズ・ペンブルックシア沖で嵐で沈没した船の船長だったことがわかった。

英デイリー・メール紙には、その後、ヒューズさんが古い記録や輸送記録などを調べ上げ、判明した事実がまとめられている。

それによると、プリチャード氏はミャンマーから英国へ米を運ぶ貨物船の船長だったが、不幸にも航海中に亡くなってしまった。プリチャード氏の遺体は海に葬られ、遺品となった懐中時計は新船長のジョーンズ船長の手に委ねられることになったのだが、航海の途中で船は嵐に遭い、1881年11月にペンブルックシア沖で沈没してしまう。このとき乗組員は全員救助されたものの、ジョーンズ船長は船と共に海中へと消え、時計も海底に沈んでしまった。

ヒューズさんが判ったのはここまで。結局、自力ではプリチャード氏の身内にたどり着く術は見つからず、捜索はストップしてしまう。そこで、アマチュア歴史家のデイビッド・ロバーツさんの力を借りることにした。するとロバーツさんは、時計に刻まれた地名「Abersoch North Wales」から、プリチャード氏の父親と思われるお墓をその付近で発見。さらに家系をたどって子孫が北ウェールズ地域に住んでいることを突き止めた。見つかったのはプリチャード氏のいとこの孫にあたる男性で、同時にプリチャード氏や妻子の墓なども見つけたという。

この男性は「こんなに時間が経ってから、時計が戻ってくるなんて嬉しい」と喜び、「私の先祖がそんな航海の歴史を持っていると知り、驚くばかりだ」と、思わぬ形で紐解かれた先祖の過去に、衝撃を隠せない様子だ。懐中時計は今年中にポースマドッグという町のホールで展示され、明かされた歴史を語り続けていくという。

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