リアルな「授乳人形」で論争に、子どもが“母乳与える”のは早すぎる?

2009/08/07 22:25 Written by Narinari.com編集部

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技術の発達により、さまざまな“体験”ができるようになった最近のおもちゃ。テレビゲームだけでなく、人間の声に反応するロボットや、簡単に生キャラメルやパスタが作れるキットなど、大人もびっくりするほど本物志向の製品が増えている。まだ日本ほど進んではいないものの、こうした傾向は海外でも見られるが、スペインのおもちゃメーカーが発売した小さな女の子向けの赤ちゃん人形は、あまりに精巧に作られていることが仇となり、「子どもには早すぎる」と、メディアを巻き込む騒動を招いてしまった。

この人形はBerjuan社の「Bebe Gloton」。価格は44ユーロ(約6,000円)で、現在はスペイン国内でのみ販売されている。ピンクの赤ちゃん服を身にまとった人形は19.6インチ(約50センチ)と、大きさは赤ちゃんの平均身長程度。男女両方のバージョンがあるという。全体的にリアルな仕上がりだが、見た目だけでなく、遊び方もかなり本格志向。一番の注目は「母乳のあげ方」だ。

YouTubeには、「Bebe Gloton」のプロモーションムービー「Demostracion Bebe Gloton」が投稿されている。この動画は、少女が人形に“母乳を与える”シーンが収められているもので、少女はまず、人形のパッケージに同梱された花柄で大きめのブラジャーのような服を着用。この服には乳首にあたる部分に花形のバッチが2つ付けられていて、泣き声をあげた人形の口にあてがうと、人形は母乳を飲んでいるような音を発し、口元が可動する。本当に赤ちゃんに母乳を与えるような疑似体験ができるというわけだ。

そして、母乳を飲み終わった合図で再び泣き声があがったら、少女は人形を腕元で横にして、胸を軽くポンポンと叩く。抱き上げてあやすと、赤ちゃん人形からはゲップの音が聞こえ、“授乳”は完了する――というのが一連の流れだ。

昔の赤ちゃん人形に比べると大きく進化しているこのおもちゃ。これまでも赤ちゃん人形にほ乳瓶を使ってミルクをあげるタイプのおもちゃはあったが、米紙サンフランシスコ・クロニクルは「Bebe Gloton」が「母乳形式として初めての人形」と紹介している。

ところが、スペイン国内のみの販売に関わらず、欧米のメディアがこの人形の話題を伝えると、市民や専門家の間で性教育問題に絡めた論議が巻き起こった。米放送局FOXは「母乳での養育利益が叫ばれる中、世界中の親がメーカーを批判した」といった内容の記事を掲載。性の低年齢化が問題となっている欧米では、「母乳養育を幼児に教えるにはあまりに早すぎで、少女らの妊娠を促進するかもしれない」と、一部の子どもを持つ親が問題視しているという。

また、FOXの健康問題の編集者、マニー・アルバレス博士は、「あまりに小さすぎる子どもにこの人形を与えるのは不適当かもしれない」としながらも、「この人形で、早く母親になりたいという衝動に駆られるかは疑問」との見解を示している。

各メディアのオンライン版に寄せられているコメントを見ると、欧米の市民の間で人形に対する見方は大きく割れているようだ。サンフランシスコ・クロニクル紙では、「子どもがやるようなことではない」という否定的な見解よりは、「これは、ただのかわいい赤ちゃん人形でしょ」「母乳を与えるのは自然な方法」といった意見の方が目立つ。

一方、デイリー・メール紙に寄せられたコメントは、「ほかにも赤ちゃんの世話はあるのに、何でおっぱいをあげる動作なの?」「私の9歳の子どもに与えるのも早いと感じる」との否定的な見解がやや多いように見える。

10代少女の妊娠が社会問題となっている欧米だけに、この人形をめぐる論争はもうしばらく続くかもしれない。

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