電磁波に悩むクラブDJ、原因不明の過敏症に改善策なく「街を歩けない」。

2009/07/27 13:08 Written by Narinari.com編集部

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近年の急速なデジタル機器の進化に伴い、発展してきた無線技術。パソコンやゲーム機の無線LANやケータイなど、特に人が集まる都市部では多くの電波が常に飛び交っている。しかし、電波は目に見えないもので、我々はその中を絶えず通り抜けていても実感することはないが、英国でクラブDJをする男性は、電波に身体が過剰に反応する「電磁波過敏症」を2年前から発症。医学界でも実証されていない原因不明の病気に悩まされ、電波が乱れ飛ぶ街を歩けずにいるという。

英国でクラブDJのほか、音楽活動を行っているスティーブ・ミラーさんが異変に気付いたのは2年前のこと。スタジオで無線LANを導入して使い始めたところ、ミラーさんと友人の双方に頭痛やめまいの症状が現れ、作業に集中するのが難しくなった。しかし、機器の電源を落とすと体調が良くなったことから、症状の原因が無線LANにあると気付いたそうだ。

最近では街にも多くの無線LANのアクセスポイントが設置されているため、ミラーさんへの影響は大きくなっている。中でも仕事上のトラブルが多く、音楽活動をするミラーさんは欧州各国のライブに参加しようと思っても空港やホテルの無線LANを避けようがなく、移動や宿泊手段に困り、参加を断念せざるを得なくなっているそうだ。

日本語では「電磁波過敏症」と言われるこの病気。英紙サンにコメントを寄せた医師によると、無線LANや携帯電話、テレビなど、機器によって波長はさまざまであるとした上で、こうした電波を受けて体調が悪いと感じる人は間違いなくいるという。頭痛や情緒不安定、吐き気、目まい、発疹の症状が現れるとされるが、同時に電磁波とこの病気の因果関係はまだ明らかにされておらず、「多くの医者がこの病気自体に懐疑的」と意見を述べている。ちなみに、サン紙はこうした症状を持つ人が、英国内で「人口の2%」いると伝えている。

また、英国の電磁波問題を扱う市民団体パワーウォッチは、「電磁波過敏症」を「理解するのが難しく、論争の的となっている病気」とし、過去の報告から「携帯電話と基地局周辺、コードレス電話や無線LANの影響を推測できる報告が多い」という。しかし、まだ研究が進んでいない状況で、多くの実証が必要であるのが現状だそうだ。

解明されていない病気だけに、「飲む薬もない」と話すミラーさん。人が集まるところはほぼNGのようで、「酒を飲もうと思ったら、5キロほど離れた、唯一無線LANがない店に行かなきゃいけない」と話すほど、日常生活への影響は深刻だ。英国内でも電磁波の影響を懸念する声は高まりつつあるようで、3か月前には教員たちが学校内での無線LANの使用禁止と、電磁波が生徒へ与える健康被害について調査するよう政府に求める動きも出ている。また、ドイツ政府は2年前、この問題に絡み、パソコンの無線接続を避けてケーブル接続を推奨したことも。

ミラーさんは「多くの人は状態を知らずに頭痛などの症状に苦しんでいるだろう」と語るとともに、会社で働くミラーさんの友人の中には、頻繁に起きる頭痛で鎮痛剤に頼っていたが、無線LANを止めたらやはり頭痛が治まったケースもあるという。現代病とも言えるこの病気。「もしもそうした体調不良を感じる人がいたら、一度無線機器を切ることを勧める」とミラーさんは提案している。

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