出席率良ければ6,000円相当のカレー券、英小学校の試みに「贈賄」の声。

2009/07/23 11:32 Written by Narinari.com編集部

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日本では義務教育を受けている間、病気や特別な事情がない限り学校を休むことは良しとされないのが一般的。しかし、英国のある小学校では日本のような考えを持つ親が少なかったらしく、学校側は児童たちの無断欠席の多さに頭を痛めていた。そこで、規定の出席率を満たした児童の親に対し、毎月抽選で1組に約6,000円相当の高級カレーレストラン食事券をプレゼントを開始したところ、出席率が大幅に改善。この試みを小学校側は自画自賛しているが、英国の教員組合や話を知った市民からは「親に対する贈賄だ」と非難の声が上がっている。

日本の義務教育は6〜15歳だが、英国では5〜16歳で、7歳までの前期初等教育は幼児学校、11歳までの後期初等教育はジュニアスクール(上級小学校)が行っている。今回の試みを開始したのは、英サウサンプトンにあるグレンフィールド幼児学校。英国の学校は、政府機関の教育基準局(OFSTED)によって運営の査察や評価が定期的に行われており、児童・生徒の出席率も重要な要素の1つに含まれている。グレンフィールド幼児学校の公式サイトには「2006年3月に健全な学校として、OFSTEDに認定された」と記載されているが、その後、生徒の出席率は「OFSTEDの基準以下」(英紙デイリー・テレグラフより)に落ちてしまったという。

そこで、学校側が児童の出席率改善に向けて打ち出したのが、「95%の出席率を満たした児童の両親へ、抽選で1組に40ポンド(約6,100円)の食事券をプレゼント」という企画だった。地元紙サウザン・デイリーエコーに対し、ジョアン・ドリコット校長は、昨年9月のプレゼント開始以来、無断欠席をする児童の数が半分に減少したとコメント。さらに「この年齢の子供たちが、学校に来ることが重要」「親にも、子供をうまく連れて行けないと思ってほしくない」とも話し、「たとえ1人の子供でも変化が起きれば、われわれにとって良い知らせだ」と、プレゼント実施に手応えを感じている様子だ。

英紙デイリー・メールによると、プレゼントの対象となるのは出席率95%以外に欠席日数が大幅に減った児童なども含まれている。これまで5組に食事券が贈られ、地元の高級カレーレストラン「POSH」で食事を楽しんだという。食事券はレストラン側が学校に協力する形で提供しており、学校側の資金は使われていない。「POSH」の店長は、サウザン・デイリーエコー紙に「こうしなければならないのは悲しいことだが、子供たちの将来のため」協力したと語っている。

サウサンプトン市議会はこの試みを「前向きな結果が出ている」と評価しているが、英メディアは、過去にも別の学校で出席の見返りに親へ食事を提供する例があり、そのときは世間から非難を受けていたと伝えている。また、専門家も苦言を呈しており、英国教職員組合NASUWTの幹部は「親が子供を学校に行かせられなければ、得られるのは刑務所行きであって、カレーではない」とコメント。教育問題の専門家であるニック・シートン氏は「これは単なる贈賄で、バカげた小細工」とバッサリ切り捨てた。

市民からもプレゼントに対する疑問の声は多い。デイリー・メール紙電子版のコメント欄には「勉強させるために学校へ通わせてるのに、何で親に贈賄する必要があるのか」「うちの娘は皆勤賞もらったけど、カレーをもらわなくても嬉しかった」など、学校側の対応や、親の意識に疑問をぶつける意見が並んでいる。教育すべきは子供なのか、親なのか、多方面からさまざまな意見が出ており、英国内でもしばらく議論は続きそうだ。

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