自分が捨てたゴミの行方を知ろう、リサイクル率100%を目指す米MITの試み。

2009/07/18 17:42 Written by Narinari.com編集部

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我々が生活していくうえで、必ず出てしまうゴミの数々。大量生産の時代、故障したものを直すよるも買ったほうが安く済む場合が少なくないため、大量に捨てられるゴミの処分対策は世界各国共通の問題だ。近年は地球環境への関心が高まっており、メーカー側もリサイクル素材を使うなど対策に力を入れ始めているが、消費する側が捨てる量をどれだけ減らせるか努力することが最も重要なことだろう。こうした意識を高めようと、米マサチューセッツ工科大(MIT)の研究チームが、英米3都市で捨てられたゴミに携帯端末を付けて移動経路をたどる調査を開始した。結果は今年9月に発表される予定だ。

今回の調査は、同研究チームが立ち上げたゴミ対策プロジェクト「Trash Track」の一環として開始したもの。「Trash Track」は、2007年4月22日の「地球の日」にニューヨーク市長のマイケル・ブルーム氏が発表した、環境に配慮した持続可能な都市整備構想「Green NYC Initiative」に賛同したプロジェクトだ。「Green NYC Initiative」はエネルギーや温暖化問題など、さまざまな環境問題に言及しており、2030年までにニューヨーク市の温室効果ガスを30%削減し、リサイクル率を100%に近づけるなどの数値目標を設定。米国内の環境団体だけでなく、国連もこの提案を歓迎するなど、各界から注目を浴びている。

MITの研究チームも「Green NYC Initiative」の趣旨に影響を受けてゴミ問題に着目し、現時点でわずか30%という都市からのゴミのリサイクル率を、数値目標に近づけるための行動を開始した。研究チームの1人であるカルロ・ラッティ教授は「ゴミ問題は今日の緊急課題の1つ」とし、同調査の目的は日々のゴミの処分過程を明らかにし、同時に現在のリサイクルと公衆衛生システムの非効率性に着目する点にあるとした。調査結果を明らかにすることにより「人々が何を消費するか、それが世界にどう影響するのかを知り、行動の変化を促すこと」が期待できるという。

調査方法は、ボランティアから寄付されたゴミ3,000点に小型の移動センサーを付け、通常通りゴミ箱に捨てるだけ。センサーはマッチ箱程度の大きさの、機能が限られた小型の携帯電話のようなもので、15分おきに電波を発信して位置情報をMITに送る仕組みとなっている。すでにシアトルで、50個の紙コップにセンサーを仕込んだ実験を実施済みだ。

ゴミが運ばれる過程はウェブ上で確認できるほか、この研究に協力する米科学誌ニュー・サイエンティスト上で数か月にわたって掲載される予定。さらに、今年9月にはニューヨークとシアトルの公立図書館で結果を展示するという。同誌は、ゴミを捨てたら終わりではなく、捨てる人の意識が重要とし、「ゴミの旅がどこで始まり、どこで終わるのかをチェックしてほしい」と読者に呼びかけている。

また、ラッティ教授自身もコンピュータや電子部品について、これらのゴミの一部がアフリカ諸国へ運ばれて害を及ぼしているのではないかと懸念していたという。同教授は英BBCに対し、その行方を追跡する意味でも、今回の調査は重要だとコメントした。

行政や研究機関がどれだけゴミ問題の対策に乗り出しても、結局はゴミを生み出す市民1人1人が少しでも注意することが最善の解決法になる。ちょっとしたゴミが環境にどれほどの影響を与えるのかを知るうえで有用な今回の調査、日本でも同様の試みが行われることに期待したい。

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