大会終了後も走り続ける「最後のランナー」、松葉杖の元兵士に声援。

2009/05/08 19:21 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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先月26日に行われたロンドン・マラソン。1981年から行われているこの大会は、英国の春を告げるスポーツの祭典として、ロンドン市民が毎年楽しみにしているイベントです。同大会はプロが競い合うためのレースというよりは、アマチュアが多く参加し、彼らが楽しみながら走る場を提供するという「市民マラソン」的な要素のほうが強いことでも知られています。

一般の参加者の中には、チャリティーの寄付金を募る目的で走るという人々も少なくありません。彼らはマラソンに挑戦すると同時に、友人らと「自分が成功したら、寄付金をもらう」との約束を事前にかわします。そして、本当に成功した暁にはこれらのお金を集金し、チャリティー団体に渡すのです。

そして今年も、ある男性がチャリティー目的のためにロンドン・マラソンを完走をしようと頑張っています。もう2週間近くも前に終了しているレースなのに、なぜ「現在進行形」なんだ、と疑問に感じる方もいるでしょう。でも本当にこの男性は、いまでもレースを続けているのです。

36歳のフィル・パッカーさんは英国軍の元兵士。イラクに出兵中の昨年、戦火の中で脊髄を負傷してしまい、下半身不随になってしまったのです。当時治療に当たった医師らは、彼に二度と歩くことは出来ないだろうと伝えたそう。しかしパッカーさんは松葉杖を巧みに使うことで、歩行することを可能にしました。そして今、1日に数キロというスピードで、少しずつ、少しずつゴールに向かって歩み続けています。

パッカーさんが今回マラソンにチャレンジしているのは、自身と同様にイラクで負傷した兵士たちをサポートするため、資金を募ることが目標にあるから。1,000,000ポンド(日本円にして約1億5千万円)を集めるのがゴールなのですが、すでに1億2千万円を超える寄付がありました。

さらにパッカーさんは、今回のマラソンが初めてのチャレンジというワケでもありません。さる2月にはドーバー海峡をボート漕ぎで渡りきり、今回のマラソン終了後の来月には、米国のヨセミテ国立公園にある900メートル以上も続く断崖絶壁「エル・キャピタン」を登る予定なのだとか。

かかりつけの医師には、

「1日に数kmしか歩いてはいけない」

と言われているため、彼がゴールにたどり着けるのは早くても今週末。それでもロンドン・マラソン運営委員会はこの「最後のランナー」を待ち続ける意向です。

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