サッカーの試合中に中指立てた選手が餌食に、中国で問題化する「人肉捜索」。

2009/04/13 22:29 Written by Narinari.com編集部

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中国で何かと話題を振りまいている「人肉捜索」。人力によるウェブ検索で、ある人物の個人情報をネット上で特定する行為を指す言葉だが、今度は北京にある一流大学を舞台に「人肉捜索」が行われ、話題となってしまった。

北京紙「新京報」によると、事件が起こったのは4月9日のこと。中国・北京にある清華大学内で催されたサッカーの試合中、審判からイエローカードを提示された選手が、騒ぎ立てる観客に向かって中指を立てたのがそもそもの発端だ。観客席の学生たちはその“無礼な行為”に怒り心頭、ペットボトルを選手に向かって投げ付けるなどの騒動に発展した。

その後、騒動は「人肉捜索」を使った同選手への徹底的な“いじめ”につながる。あっという間にネット上に名前や宿舎の場所、携帯電話の番号などがさらされ、中国版Facebook「校内網」の清華大学のページには、度重なる中傷コメントが書き込まれる始末。同選手が謝罪表明したにも関わらず、事件に関する詳細をマスコミや教授などに通告する者まで登場した。

中国では最近、「人肉捜索」による事件が後を絶たない。例えば、08年1月、夫の不倫を苦に自殺した女性がつづっていた通称「死亡ブログ」が話題となり、自殺した女性の夫は愛人と共に職場や実家などの細かい個人情報が晒され、結果として職場をクビに。08年11月には、レストランで少女に性的いたずらをしようとした政府高官が「人肉捜索」にかけられた。防犯カメラの映像がネットに公開されたためで、あっという間に人物が特定され、停職処分になっている。また、09年2月には、毛沢東像にまたがった中国人女子大学生の画像がネットに公開され、個人情報を暴露されて脅しを受けるようになったと現地メディアで報じられた。

中国のネット人口は3億人に届く勢いで、いまや世界最多を誇る。そんな中、「人肉捜索」による餌食は増える一方だ。状況を危惧した全国人民代表大会(全人代)常務委員会の朱志剛委員は「新たな法律を制定し刑事責任が問えるようにするべきだ」と提案しているが、政府役人の「自己保身ではないか」という反発意見も多く、「人肉捜索」に秩序が生まれる気配は今のところない。中国内では、ネットにはそもそも「秩序など必要ない」とする声も根強いが、普通であれば警察沙汰にならないような小さな事件が「人肉捜索」で大きく騒ぎ立てられ、個人の人生を滅茶苦茶にしてしまう恐れがあるのも事実だ。

ちなみに、先の「中指事件」は、騒ぎを知らされた大学側がすでに介入しているとのこと。選手である学生には何らかの処罰が下される見込みだ。

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