母親のキスで生後11日の赤ちゃんが死亡、ヘルペスウイルスにご注意。

2009/03/01 18:57 Written by コジマ

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母親が生まれたばかりの赤ちゃんを抱きしめてキスをする。新生児のいる家庭なら日本だけでなく世界中で見られる光景だが、この愛情表現によってわが子を失うという悲劇が英国で発生した。ラス・ショフィールドさんの娘ジェニファーちゃんの人生をたった11日で終わらせたのは、単純ヘルペスウイルス(HSV)。口唇ヘルペスの原因となるウイルスだ。

病気や疲労、ストレスなどで体が弱ったとき、唇の周りに水ぶくれができる口唇ヘルペス。その原因となるHSVは世界人口の約半数、日本でも10人に1人が感染しているといわれ、年齢が高くなるにつれて感染率も増加する。

ラスさんはジェニファーちゃんを妊娠中にHSV感染が判明し、出産前は医師に風邪の兆候を訴えて抗生物質を処方された。さらに、出産2日後に口唇ヘルペスの治療を受けたが、ラスさんはジェニファーちゃんにキスをし続けていたという。

ジェニファーちゃんは生まれて間もない頃から食欲が振るわず、生後8日目には病院で検査を受けることに。しかし、検査前に容態が急速に悪化したため延命治療を受け、さらにその3日後、家族は延命治療の中断に同意。ジェニファーちゃんは生まれてわずか11日でこの世を去った。

口唇ヘルペスは2週間程度で治るものの、原因となるHSVは完全に消えず「三叉神経」の奥に潜んでいる。そのため、体が弱ったときにHSVの活動が活発になり、口唇ヘルペスを再発することが多い。また、免疫を獲得していない成人やアトピー性皮膚炎患者、新生児がこのHSVに感染すると重症化し、新生児の場合は死亡するケースも。新生児の死亡例は、英国で年6件報告されているという。

そのため、医療機関などではHSV感染者に新生児へのキスを避けるよう訴えているが、母親が感染者の場合、新生児でも重症化しないというのが定説。製薬大手グラクソ・スミスクラインのヘルペス専門サイト「Herpes.jp」(//herpes.jp/)でも、「母親がすでにヘルペスウイルスに感染していて免疫がある場合、新生児の症状はそれほど重症化しません」と説明している。

しかし、ラスさんのケースは出産前にHSV感染が認められたものの、ジェニファーちゃんの出産までに免疫を獲得できなかったことが悲劇を招いたようだ。

ラスさんは、英紙デイリー・ミラーに対して「ジェニファーはHSVに感染していた兆候も口唇ヘルペスの症状も出ていませんでした。子供を失うというのは、母親にとって最も痛みを伴うこと。それは終生、自分の中に刻まれます」とコメント。また、妊娠した女性へより多くの警告を訴えるよう求める手紙を、ゴードン・ブラウン英首相に送ったという。

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