「他人の不幸は蜜の味」は本当だった? 妬みと脳機能の関連が判明。

2009/02/14 14:16 Written by Narinari.com編集部

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美男美女のカップルが破局する、会社のライバルが仕事でヘマをする、嫌いな芸人が“ダダすべり”する――他人のこうした状況を見て、ほくそ笑む自分に気づいた人も多いかもしれない。学校や職場の同僚、テレビで見る華やかな芸能人など、いつの間にか自分と相手を比較して親しくなったり嫌いになったり、恋愛感情を抱いたりと、人の感情は複雑だ。

そんな時、人間の脳はどのように処理されているのか。放射線医学総合研究所などの研究チームは学生19人を対象に実験を行い、その結果を米科学誌サイエンスに発表した。

同研究所の高橋英彦主任研究員らが行った実験は、自分が主人公となって、自分よりさまざまな面で優れている同性の友人「A」、友人ではない優れている異性「B」、友人ではない自分と同程度の異性「C」が登場するシナリオを読ませるというもの。自分がそれぞれの人物に対してどのような感情を抱いているかをアンケートで答えてもらい、同時に機能的磁気共鳴画像診断装置(fMRI)で脳の活動を調べた。

その結果、登場人物を妬む度合いはA、B、Cの順に強く、脳の状態を調べると「前部帯状回」と呼ばれる葛藤や身体的痛みを処理する部位が関連していた。つまり、心の妬みは脳の中で身体的苦痛と同様に処理されていることがわかったという。

さらに、AとCに不幸が起きた場合、Aに対してはうれしい気持ちが起きたが、Cにはうれしい気持ちが起きなかった。そのときの脳の状態は、うれしい気持ちが起きたとされる時に「線条体」と呼ばれる報酬に関連する部位の活動が活発になっており、それが自分の満足感として認知されているようだ。

以上の結果から高橋研究員らは、自分より優れている人に対して抱く劣等感という心の痛みが強い人ほど「他人の不幸が起きると痛みが緩和され、蜜の味と感じやすいことが脳科学的に示された」と結論している。今後は研究を進め、心理カウンセリングや精神医学などの分野に応用していくという。

人間が集団の中で生きていく以上、さまざまな感情が芽生えるのは当然のこと。しかし、競争や格差によって生じた妬みが、世の中を殺伐させているという見方もある。研究を重ね、感情のコントロールの仕方にアプローチできれば、多くの人の苦痛を取り除ける日が来るかもしれない。

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