天然記念物「北限のサル」捕獲開始、増えすぎで住民との共存難しく。

2009/02/11 11:48 Written by Narinari.com編集部

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青森県下北半島に生息するニホンザル「北限のサル」は、日本だけでなく世界でも最北に住んでいるサルとして有名だ。1970年に国の天然記念物に指定され、地元の観光資源としても活躍してきた。でも一方で、生息数が増えすぎたことから、農作物への被害が深刻化している。そのため、同県むつ市では、天然記念物指定後では初となる捕獲作業が始まった。

下北半島は青森県の東側に広がるまさかり型をしており、半島中央部にはイタコで有名な恐山がある。太平洋と陸奥湾に囲まれた細長い地形ながら山地も多く、陸奥湾のホタテ、大間のマグロなど海産物も豊富。そんな自然豊かな下北半島の観光を支えてきたのが「北限のサル」だ。

「北限のサル」は主に、下北半島の西部の山間部に生息している。半島南西部に位置するむつ市脇野沢には「地獄谷野猿公苑」あり、ここでは気軽に「北限のサル」を見ることができる。この「野猿公苑」に生息するサルは、過去の捕獲作戦で捕えた群れを観光資源化したものだ。

もともと有害鳥獣に指定されていた「北限のサル」、一時は絶滅の恐れが指摘されたが、近年は生息数が増加している。そのため、農作物を荒らしたり人に危害を加えたりなど、地元住民とのトラブルが絶えない状態だ。しかし、天然記念物のため勝手に捕獲することができず、防衛策を講じてもサルはさまざまな方法で侵入してくるなど、地元住民は対応に苦慮していた。こうしたことから、青森県と天然記念物に指定した文化庁が話し合いを実施。2011年度までに270匹を捕獲することで決着した。

捕獲を予定している270匹は農作物や人間に被害を与える群れや個体で、捕獲後に安楽死処分になる見込み。うち20匹はこの捕獲作戦を知った上野動物園が引き取りを申し出ている。捕獲作戦初日の2月9日には8匹が捕獲されたが、うち3匹は3歳以下のため「群れの維持」を目的に放したという。

生息地域の開発や生息数の増加によって、サルを含む野生動物の農作物被害は全国各地で増加している。「北限のサル」も観光客は喜ぶが、住民との共存はなかなか難しいのが実情のようだ。

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