中国で徳川家康が大ブーム、山岡荘八の小説は200万部を記録。

2009/01/26 23:18 Written by コジマ

このエントリーをはてなブックマークに追加


日本の戦国時代を終わらせ、200年にわたる江戸幕府を開いた徳川家康。苦難と忍耐の日々を経て成功をつかんだ人生は、日本の高度成長期にも大きな影響を与えた。特に山岡荘八の小説「徳川家康」は経営者の教科書としてベストセラーとなり、現在までにシリーズ合計5000万部を発行している。また、韓国でも「大望」というタイトルでベストセラーとなったようだ。

そんな山岡荘八の小説「徳川家康」が中国で大ブームとなっていると、読売新聞が報じている。同紙によると、数十万部売れたら大ベストセラーとされる中国で全13巻合計約200万部を売り上げているそうだ。

「徳川家康」の中国語版(南海出版社刊)第1巻が出版されたのは、07年11月のこと。03年に南海出版社が出版権を正式に取得し、翻訳に取りかかったという。服飾メーカー小島衣料の社長で数々の著書を手がけている小島正憲氏によると、当初は書店販売員が興味を示さなかったが、出版社が「日本ではベストセラーとなり、日本の経済発展に寄与した」こと、「政財界の著名人にも愛読されている」ことなどを説明すると、売り場の担当者たちが出版に興味を示すようになったのだとか。

実際、中国在住の日本人のブログ「道に迷って、今、蘇州・・・」で紹介されている画像をみると、帯に中曽根康弘元首相やパナソニック創業者・松下幸之助氏の言葉が引用されており、「日本で4000万部 中国繁体字版で500万部 男子成功への必読の不朽経典」などと記されている。

こうした宣伝に加え日中関係の雪解けムードが功を奏したのか、昨年5月の時点で第1巻の売り上げは20万部を超え増刷。現在は全13巻の発行部数は200万部を記録している。日本の小説では村上春樹や渡辺淳一の作品が人気だったが、歴史小説がここまで売れるのは異例のことなのだそうだ。

この「家康ブーム」について、読売新聞は「金融危機による景気後退で経営環境が悪化する中、いかに困難を克服するかを考える上で、家康の生き方や戦略に共鳴する企業家が多い」としている。村上春樹らの作品を支持していた中産階級ではなく、中国の都市部の企業家や「白領」と言われるホワイトカラー層に人気のようだ。

一方、この「ブーム」を昨年8月に報じた毎日新聞は、関ケ原を舞台とする日本の戦国ゲームで遊んだのがきっかけとする読者の声を紹介し、「中国でも今や、ゲームソフト人気が本のベストセラーの行方を左右しているようだ」としている。

また、前述の小島正憲氏はネットに寄せられた中国人読者の声を紹介。「“徳川家康”の読者層は9〜99歳と言われているが、人生の間で一度は読むべき本である。しかも1回だけでなく何回も読む本である。この本は生存哲学と知恵の学習宝典でありながら、同時に商売人や経営幹部などに勝ち方を教える策略本である」「織田信長と豊臣秀吉と徳川家康のホトトギスに対する態度は、たいへんおもしろかった。中でも徳川家康の『鳴くまで待とうホトトギス』という態度の中に、彼の成功の秘訣があると思った。日本の戦国時代の勝者になった徳川家康は忍耐と我慢の人間だったことがよくわかった」など、おおむね好評だ。

いずれにせよ、日本の歴史的人物が他国で評価されるのは、日本人にとってうれしいことではないだろうか。また、「家康ブーム」を受けて司馬遼太郎らの歴史小説も中国の書店に並び始めているという。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.