宇多田ヒカルが不時着旅客機の過剰報道に疑問、「アメリカらしい」。

2009/01/18 19:07 Written by コジマ

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世界中に衝撃を走らせた米ニューヨーク・ハドソン川で起きたUSエアウェイズ機の不時着事故。日本人2人を含む乗客・乗員155人全員が救助されたことにより、米メディアは相次いで「ハドソン川の奇跡」と報じている。とりわけ、完璧な操縦でこの危機を乗り越えた飛行歴40年のチェスリー・サレンバーガー機長に称賛の声が寄せられているようだ。

不時着した機体が1549便だったことから、米国ではロトをはじめ「1549」という数字が人気を呼ぶなど盛り上がっているようだが、歌手の宇多田ヒカルが自身の公式ブログでこの「狂想曲」に疑問を投げかけている。

1549便は1月15日、国内便のターミナルであるラガーディア空港を飛び立った直後、エンジンに鳥を巻き込む「バード・ストライク」が発生。この機体のエンジンは約2キロの鳥の衝撃に対応した設計だったものの、吸い込んだ「カナダガチョウ」は6キロ以上になることから、耐え切れずエンジンがストップしてしまったようだ。

この危機を救ったのが、通算飛行時間1万9000時間以上のベテランパイロット、サレンバーガー機長の判断だ。同機長はハドソン川への不時着を完璧に遂行しただけでなく、乗客非難後は逃げ遅れた人がいないか確認するため、沈みゆく機体の通路を2往復したという。また、パニック状態となった乗客を冷静・的確に誘導した乗務員の対応にも賛辞が送られている。

そんな「ハドソン川の奇跡」に対して宇多田ヒカルは、「奇跡ってナンダ?」と題した1月17日付のエントリーで「非常に優秀なパイロットが操縦していて、ありえないような不時着水が成功して、死者ゼロ、ってこと、それらが、『奇跡』っていうふうに思えん・・・。乗客がラッキーだとも思えん。1549便が鳥を五羽も同時に吸収したことをアンラッキーだとも、思わん」とし、「ニュースを見てて違和感を覚えた。今回の不時着水を成功させたパイロットが突如、アメリカいちのヒーローになってるからかな。彼は何十年も同じように生きてるのにね。不思議だね」との独自の見解を示した。

さらに、こうした盛り上がりを「国際的な舞台よりも、国内を舞台にしたヒーロー物語を好むっていう点が非常にアメリカらしいな」と分析。自国が一番と思っている米国に対し、昨今の金融危機などを絡めて「いつまでそのポジションを保てるんだろうね、アメリカ」との皮肉も展開した。ただ、全員無事だったことについては「死者がゼロで本当によかったね」とつづっている。

とはいえ、メディアだけでなく、救助された乗客たちもサレンバーガー機長や乗務員の対応を絶賛している。また、人口密集地帯のマンハッタンやクイーンズを通過し、不時着地点と住宅街との距離はわずか数百メートル、さらに気温が氷点下8度(水温は約4度)だったことなどを考えると、一歩間違えれば大惨事となっていたのは間違いない。「奇跡」と騒ぐのもやむを得ないことだろう。ちなみに「ハドソン川の奇跡」と命名したのは、ニューヨーク州のデビット・パターソン知事だという。

宇多田ヒカルは「ひねくれてるんじゃないよ(笑)自分の人生や日々の生活においては、いつも、なんて幸運なんだろう、なんてありがたいんだろう、って感じる」「私は・・・1549便の不時着水も、崖っぷち犬も、そこまで盛り上がる感覚が分からん。やっぱり私はアメリカ人にも日本人にもなれないのか」と、意識のズレに一抹の寂しさを抱いているようだ。

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