帰国したオシム氏が「最後の語録」、日本人選手の決定的な弱点とは。

2009/01/05 23:57 Written by コジマ

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各国のユース世代で行われている練習方法を取り入れるなど、日本サッカーのレベルアップに貢献した前日本代表監督のイビチャ・オシム氏。2007年11月に急性脳梗塞で倒れたことで代表の指揮は岡田武史監督にゆだねられたが、現在もオシム氏の代表監督復帰を熱望する声は少なくない。

本人も日本サッカー界への積極的な関与を望んでおり、昨年5月には協会とアドバイザー契約を結んだほか、ユース世代の指導など具体的なプランも描いていた。ところが昨年末からの来日で、体制が変わった協会はオシム氏とのアドバイザー契約の打ち切りを発表。協会側は健康状態を配慮したことを理由に挙げていたが、退任を告げられたオシム氏は少なからずショックを受けていたようだ。

そんなオシム氏が、1月4日に自宅のあるオーストリアへ帰国した。空港に集まったファン約300人に対して握手を交わしたことで貧血で座り込む場面もあったが、「早まって私が死んだと報道しないように」と冗談で切り返すなど、最後まで「オシム節」を貫いた。その一方で、千葉県にある日本での自宅の契約も更新しておらず、日本からの「完全撤退」とも報じられている。日本との関係がなくなることを惜しむとともに、日本サッカー界に変革をもたらした名将を切り捨てた協会に対して疑問を呈すサッカーファンも多い。

こうした中で、オシム氏が「最後の語録」として日本人選手の決定的な弱点について言及したと、1月5日発売の東京スポーツが報じている。オシム氏が挙げたのは、よく言われる「ハングリー精神の欠如」ではなく「高度な教育」。「頭が良い」ことが、世界的に活躍できる選手があまり出てこない原因だという。

南米から優れた選手が多数輩出されることについて、多くの人が「ハングリー」であることを理由に挙げている。実際、ロナウド選手やアドリアーノ選手(インテル)らはブラジルの中でも特に貧困な地域の出身であることが知られているが、同じブラジル人でもカカ選手(ミラン)やジョニーニョ選手(リヨン)のような富裕層出身のトップ選手も少なくない。

こうした点をかんがみてか、オシム氏は日本人選手が世界でなかなか活躍できない理由としてハングリー精神の欠如を否定。その代わり、「日本は社会的にも安定し、経済的に発展している。誰もが高度な教育を受けられる。私はこれこそが原因と考えるのだ」(東京スポーツより)との持論を披露した。プロ、その中でもトップ選手になるためには生活のすべてをサッカーに捧げるほどの努力が必要だが、「これがいかに大変か(日本の)選手は頭が良いので分かってしまう」(同紙より)ため、先を考えて努力することをやめてしまうとしている。

日本は「分際をわきまえる」、つまり身の丈を超えないことを美学とする向きがあるが、スポーツでトップ選手を目指す人は自分の限界を超えることが要求される。オシム氏が日本のサッカー選手へ向けた「最後のアドバイス」は、あまり先読みせずに突っ走る勇気を持つことなのかもしれない。

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