映画「櫻の園」が大コケ、1館あたりの興行収入はわずか25万円。

2008/12/11 23:32 Written by Narinari.com編集部

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吉田秋生の同名マンガを、1990年に中島ひろ子主演で映画化した「櫻の園」は、日本アカデミー賞優秀賞をはじめ21もの映画賞を受賞した名作。劇中に特に大きなドラマがあるわけではないが、女子校の演劇部を舞台に、チェーホフの戯曲「櫻の園」上演に取り組む高校生の青春、葛藤、表情を見事に切り取った中原監督の手腕は、各方面から高い評価を受けた。

そんな中原監督が再びメガホンを執り、「櫻の園」の後日譚を描いたのが福田沙紀主演の「櫻の園 ーさくらのそのー」。同作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めたオスカーの石川薫専務が「最低でも興行収入15億円」と豪語するほど、製作に携わったオスカープロモーションの大きな期待を背負っていた作品だ。

ところが、11月8日の公開直後から観客動員は大不振。テレビCMやYahoo!JAPANでのプロモーションを展開するなど、宣伝に力が入っていたにも関わらず、なかなか客足は伸びない。結局11月30日までの23日間で、延べ観客動員数は30,431人、興行収入は3,775万6,900円(文化通信より)と、まさに「惨敗」という結果となってしまった。この数字は単館上映作品ではなく、メジャー作品並みの150館規模で公開された映画としては異例の低さ。単純に興行収入を上映館数で割ると、1館当たりの興行収入は約25万円と、目を覆いたくなる数字だ。

興行収入の低さと連動するように、ネットでは作品への批判が目立つ。例えばYahoo!ムービーのレビューでは、1990年版の「櫻の園」が5点満点中4.24点と高得点なのに対し、2008年版は「櫻の園 ーさくらのそのー」は同2.94点とかなり低い。2008年版のレビューの中には「得点ほど悪くない」「演技自体は悪くない子もいた」等の前向きな評価もあるものの、「なぜセット売りみたいな子しか出演してないのか」「間違い無くオスカープロモーションの若手タレントのPR映画だと思います」と、製作に携わったオスカープロモーションのタレントを中心に構成されたキャスト陣に批判が集中している。

現在発売中の「週刊新潮」では、「櫻の園 ーさくらのそのー」が大コケした理由を配給会社関係者が分析している。それによると、映画誌「映画芸術」に掲載されたプロデューサーのインタビューでは「女性タレントを生かす企画としてオスカー側から『櫻の園』を提案されたこと、同社が勝手に150館上映を決めた上、より派手な内容を求めてきたこと」が明かされているそうだ。このインタビューを踏まえた上で、「テレビならそれでも視聴率を取れたかもしれないが、わざわざ映画館に来てお金を払ってくれるファンまではいなかった。そこが最大の誤算」としている。

1990年版の「櫻の園」は中原監督の“作家性”が強く推し出され、観る者の心を捉えた作品、一方の2008年版の「櫻の園 ーさくらのそのー」はプロダクションの“プロモーション”色が強く推し出され、その点が観る者にも見透かされてしまった作品。同じ監督が、同じ題材を扱いながらも、背景にある狙いが異なっていた以上、大コケは必然だったのかもしれない。

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