新人レスラー死亡事故に評論家が苦言「プロとして最低限の技術を」。

2008/12/08 22:12 Written by コジマ

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さまざまな団体が林立している日本のプロレス界。全盛期に比べてその人気は低迷しているものの、ストーリー性が明確な「ハッスル」や地元密着型の団体が好評を博すなど、あらゆる手法でファンを楽しませてくれている。

その一方で、団体の乱立によってプロの敷居が低くなり、「基本」をしっかり学んでいないレスラーが増えているとの指摘もある。体を張る職業であるため、受身などの「基本」を身につけていないと重大な事故につながりかねない。こうした中で、今年10月に悲劇が起きてしまった。総合格闘技団体「我道会館RofC」の新人レスラー、由利大輔さんが練習中の事故が原因で亡くなったのだ。

そんな由利さんの死亡事故について、「熱血プロレスティーチャー」の異名で知られるプロレス評論家、小佐野景浩氏が公認サイトのブログで苦言を呈している。事故そのものについて「本当に危険なプロレスごっこの世界だ」としたほか、現役プロレスラーたちに対しても警鐘を鳴らした。

由利さんは10月18日、所属する我道会館と2団体の合同練習に参加。その中で、我道会館の代表を務める菅原伊織選手らが、由利さんを“実験台”に大技「ダブル・インパクト」の練習をすることになった。由利さんは当時、入門8カ月の新人。8月にデビューして2試合をこなしていたものの、本格的な練習はたった2回しか行っていなかったという。

事故の経緯については、格闘技取材プロダクション「拳論!」のブログに詳細が記されている。それによると、

・深夜1時、「R of C」の3人、菅原と笠原、故人の3人で「ダブルインパクト」をやることになり、体育用マットをリングに敷き、菅原が故人を肩車。これを笠原がコーナーから攻撃をした。この際、由利さんが頭から落下してしまい、意識はあるものの体が動けなくなってしまった。

・救急車を呼び、由利さんを都内病院に搬送。由利さんの家族が菅原に「責任者は?」と聞いたが「ユニットだから代表はいない」と返答。ただし、笠原の方からは菅原の発言とは違う“正しい認識”が話されたという。その後、菅原と笠原は湾岸署に出頭し事情説明を行なっている。

由利さんは10月24日に搬送先の病院で死去した。当事者たちの話が食い違っているほか、何の説明もないため遺族は悲しみの中で怒りに震えているという。

小佐野氏は、この事故について「本当に胸が痛む事件である」としたうえで、「だいたい、ダブル・インパクトの練習をやるということ自体が信じられない。しかも、その練習台にしたのが練習生期間4ヵ月、デビュー4ヵ月で2試合しかやっていない新人だったというのも信じがたい話である。この軽率さは、とてもプロの人たちとは思えない。本当に危険なプロレスごっこの世界だ」との憤りを記した。

当事者たちにも「果たしてダブル・インパクトをやった人たちは技を調節できるだけの技術を持っていたのか? 由利さんはちゃんと受け身をマスターしていたのか? 指導者は教わる人間の命を預かっているということを自覚していたのだろうか?」との疑問を投げかけ、「人の命の尊さ、事の重大さをきちんと受け止め、御遺族に対して誠実な対応をすることを望むし、業界に対してどういう形で責任を取るのかを考え、行動で示してほしい」としている。

また、最近の若手レスラーは派手な技をやりたがり、受身をマスターしていないためにケガをする場面が増えているという指導者の証言を紹介。現役レスラーに対して「プロとしての最低限の技術を身につけてください」「少なくとも受け身が取れるようになるまで試合をしないでください」「プロレスラーを名乗る以上はプロレス界に対して責任を負っていることを自覚してください」と訴えた。「ノア」を中心とした団体がその枠を超えて合同練習を行っていることを例に挙げ、「こうした活動が大きな輪になっていってくれることを望む」との願いも述べている。

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