マリナーズ新GM補佐就任でデータ野球導入、イチローが岐路に。

2008/12/02 22:05 Written by コジマ

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投打ともに崩壊した今季、ダントツの最下位に終わった米大リーグのシアトル・マリナーズ。シーズン途中に監督、GM、主砲を解雇する大改革に打って出たものの、ここ10年で初めて100敗以上を記録した。また、イチロー外野手に対してチームメイトの不満が爆発寸前だった報じられるなど、チーム内の不協和音も生じているようだ。

こうした状況を変えるべく、捕手出身のドン・ワカマツ新監督に続いて、トニー・ブレンジノ氏がGM特別補佐に就任した。ブレンジノ氏は統計データを活用する野球「セイバーメトリクス」の第一人者。球団は「統計研究部」を設立して同氏をその責任者に任命したが、セイバーメトリクスの導入によりイチロー選手が岐路に立たされていると、米紙ニューヨーク・タイムズなどが報じている。

1970年代に野球統計の専門家で野球ライターのビル・ジェームズ氏によって提唱されたセイバーメトリクスは、データを客観的に分析して采配に生かすという手法。80年代から重視されるようになり、97年にオークランド・アスレチックスのビリー・ビーンGMが採用してその効果が注目された。現在では専門のシンクタンクも設立されており、多くのメジャー球団が取り入れているが、マリナーズはこの分野で最も後れを取っている。

ブレンジノ氏のGM特別補佐就任により、頭脳改革がマリナーズでも起きることが予想されているが、セイバーメトリクスはイチロー選手の野球観と相容れない部分がある。例えば、セイバーメトリクスでは出塁率と長打率を足した「OPS」が重視されているが、イチロー選手はこのメジャーでのトレンドをあえて無視し、安打数にこだわっている。

それは成績に如実に反映されており、今季のイチロー選手は213安打がメジャー最多タイ、打率.310はリーグ7位だったものの、OPSは.747でリーグ45位。今季ナ・リーグMVPに輝いたアルバート・プホルス内野手(セントルイス・カージナルス)のOPS1.114に大差をつけられており、セイバーメトリックスの観点からはイチロー選手が打撃において決してトップ選手ではないことを物語っている。

ブレンジノ氏は、セイバーメトリクスを「あくまでサプリメント(補助的要素)にすぎない。最終的な判断は選手を実際に見て決める必要がある」(ニューヨーク・タイムズより)としており、イチロー選手が受け入れるかについても「それは彼次第」(同紙より)と述べた。あくまで自主性に任せる構えのようだ。

しかし、ニューヨーク・タイムズは「イチローがクラブハウスのロッカーで、ノートパソコンを駆使してデータ分析をすることはしないはず」としており、イチロー選手がセイバーメトリクスの受け入れを拒否してチーム内が不穏な雰囲気になることを懸念している。

ボストン・レッドソックスをワールドシリーズ制覇に導いたセイバーメトリクスの導入は、01年以来プレイオフへ進出していないマリナーズにとって福音になることが予想されるが、ブレンジノ氏にとってまずはチームリーダーとの“和解”が課題となりそうだ。

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