島民撤収から1年後の様子を捉えた映画「軍艦島1975-模型の国-」。

2008/10/27 21:32 Written by Narinari.com編集部

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世の「廃墟ブーム」の流れから脚光を浴びるようになった長崎県の軍艦島(正式名称は端島)。明治時代に石炭の存在が確認され、八幡製鉄所への石炭供給基地として栄えた軍艦島は、1974年に炭鉱が閉山したことからすべての島民が撤収し、住居(日本初の鉄筋高層住宅を含む)や商店、学校、娯楽施設など、街が丸ごと廃墟となった希有な島だ。

島全体が廃墟となったのには理由がある。軍艦島は明治23年に三菱が島全体と採掘権を買い取り、三菱の所有する「民間所有」の島になった。そのため、炭鉱が閉鎖された後は誰が移り住むわけでもなく、無人の島にならざるを得なかったわけだ。最盛期には5,000人もの人たちが生活し、世界最高の人口密度を誇った島も、石炭産業衰退の波に飲み込まれ、廃墟となっていった。

ちなみに軍艦島を所有していた三菱マテリアルは、2002年に長崎県長崎市の旧高島町に無償譲渡している。そのあたりから、軍艦島の観光利用が徐々に検討され始めているようだ。

ネットで「軍艦島」と検索すると、たくさんのサイトや写真を見ることができる。朽ち果てた高層住宅、荒れた小学校跡、不気味さの漂う病院など、長い年月の流れの中で、「生活の場」が自然の力によって破壊された様子は、廃墟愛好家ならずとも引き込まれてしまうものばかりだ。

こうした写真の多くは、無断上陸して撮影されたものや(※軍艦島は上陸禁止の島。合法的な観光は船で近くまで行くところ止まり)、正式な許可を得て上陸した報道機関によるもの。そのいずれも「廃墟ブーム」の中で撮影されたものがほとんどで、21世紀になってからの写真が多い。でも、島民が完全撤収してから1年後、1975年に撮影された「軍艦島1975-模型の国-」という、まだ軍艦島に生活臭が残されている頃の記録映画があることをご存知だろうか。

「軍艦島1975-模型の国-」は映画研究会の大学生グループによる自主製作映画。人が居なくなって1年というわずかな時間でも、荒廃はところどころで始まっているが、それでもフィルムに映る軍艦島の様子は現在のそれとは大きく趣を異にしている。島内では猫が生活し、建物はまだしっかりと残り、学校跡には子どもたちが描いた絵が綺麗な状態で飾られている……といった具合だ。全編を通してホラー演出となっているのは賛否が分かれるところだが、貴重な映像資料なのは間違いない。

この映像は昨年初めてDVD化(販売元:エースデュースエンタテインメント)され、誰でも目にすることができるようになった。軍艦島に興味があるなら、一度は見ておきたい映像だ。

なお、軍艦島の世界遺産登録を働きかける動きも活発化しており、今年9月には「九州・山口の近代化産業遺産群」として、文化庁が世界遺産国内暫定リストに登録するところまで漕ぎ着けている。

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