市長が交通違反をもみ消し? 権力に立ち向かった「正義」の警察官。

2008/10/24 14:29 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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ちょっと映画みたいな話。

日本でもそうですが、運転中に携帯電話を使用すると交通違反として罰せられる州または地区が、米国にもいくつかあります。イヤフォン使用のケースでもダメだったり(OKな所もある)、一般の車は許可されているけれど、スクールバスの運転手は禁止されていたりと、場所によってまちまちな法律になっているので、米国の国内旅行には注意が必要です。

さて、ニューヨークもドライブ中の携帯電話の使用が原則禁止になっている州です。そして先日、ニューヨーク市郊外のベッドタウン、ママロネックという町でパトロール中のマイケル・ペトリーロという警察官が、ひとりの女性を取り締まりました。彼女も運転中に通話をしていたからです。

ところがこの女性、なんと同市の市長キャサリーン・サヴォルト女史だったのでした。彼女曰く、

「この電話は緊急だったのよっ。それに車を脇に寄せて駐車する場所も無かったんだから、仕方が無いでしょう!」

私はこの街の有力者で、大切な地位に就いている、後に回せない重要な電話もかかってくるんだ……、といったことをまくし立てた市長。権力を振りかざして猛反論してきます。しかし違反は違反。相手が誰だって同じことだ、とペトリーロ警察官は彼女に違反チケットを手渡しました。法の下には何者も平等ですしね。

ところが後日、同市の地方裁判所では、市長が主張していた「緊急を要する内容の電話」という訴えがまかり通り、違反は白紙に。確かに同州の法律では、事故や命にかかわる場合など、緊急時の携帯使用は許されています。しかし市長の通話は、それに該当していたかどうかは定かではありません。なんとなく市長が裏で裁判官に手を回したような、不正行為の匂いも漂います。

しかし、ペトリーロ警察官。ここで諦めるほど「やわな男」じゃなかったようです。無効判決が出たその晩、なんと市長の自宅に出向き、玄関に出てきた市長本人に、

「先にお渡しした違反チケットは、どうやら不公平な優遇で取り消しになったようです。なのでもう1回、同じモノを発行しますから」

と、彼女に再度チケットを突きつけたのです。これには市長もビックリしたことでしょう。

再発行されたチケットの有効性があるのかどうかは疑問ですが、不正に真っ向から立ち向かった警察官。職務に忠実な、正義を守ろうとした男に共感を覚える米国民は多いようです。

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