英サッカークラブに巨額負債判明、金融危機余波で破綻の可能性も。

2008/10/08 22:46 Written by コジマ

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サッカー発祥国として、世界中の選手や関係者、ファンから尊敬を集めている英イングランド。そのプロリーグは、1888年創設という世界最古のものだ。トップリーグであるプレミアリーグは過去に多くの国際大会優勝チームを輩出しており、昨年は欧州チャンピオンズリーグのベスト4に3クラブが進出し、決勝は同大会初のプレミア勢同士の対決となるなど、再びクローズアップされている。

その一方で、同リーグで近年問題となっているのが外国人オーナーによる買収だ。全20クラブ中8クラブが外国人オーナーを迎えているが、今季開幕直前、マンチェスター・シティがスライマン・アル・ファイム氏率いるアラブ首長国連邦(UAE)の投資会社アブダビ・ユナイテッド・グループに電撃買収された(同クラブは前のオーナーもタクシン・チナワット元タイ首相)ことにより、英国内ではその是非について論争が再燃。英政府のアンディー・バーナム文化相は「この状況が今後10年続けば、サッカーは伝統と切り離される。これが果たしてサッカー界のためになるのか、十分に吟味すべきだ」とのコメントを発表し、現況を憂慮している。

こうした中で、プレミアリーグのクラブが巨額の負債を抱えていることが明らかになった。これは世界的に拡大している金融危機の影響によるもので、その額は全クラブ合計で約30億ポンド(約5220億円)。約3分の1は、4大クラブと呼ばれるマンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナル、リバプールが占めているという。イングランド・サッカー協会(FA)のデービッド・トライズマン会長は、ビッグクラブが破綻する可能性まで指摘している。

プレミアリーグでは、マンチェスターUが政府管理下に入った米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)とユニホームのスポンサー契約(年間2000万ユーロ=約27億1200万円)を結んでおり、ウエストハムのスポンサーである英旅行業大手XLレジャーグループが破綻するなど、金融危機の影響が懸念されていた。また、米国人オーナーが共同経営するリバプールでは、新スタジアム建設を遅らせることを決定している。

これらについて、国際サッカー連盟(FIFA)のジョセフ・ブラッター会長は「まるで、シャツを買うかのようにクラブが買われていく」とイングランドサッカー界の現状を批判したうえで、「こうした金満オーナーたちについて、何か手を打たなければならない。欧州サッカー連盟(UEFA)には、欧州連合(EU)と協力して規則を厳しくするよう要請している。さもないと、将来財政的に困窮する事態になるだろう」と金融危機の影響を懸念していた。

一方で、イングランドと同じく強豪クラブを抱えるスペインのマスコミは、AIGが破綻寸前になったことによってマンチェスターUが経営難となり、今季開幕前にレアル・マドリードへの移籍がかなわなかったクリスティアーノ・ロナウド選手が放出されると楽観的に報じていたが、スペイン国内も今回の金融危機以前から経済的な困窮状態に陥っている。その余波はサッカークラブにも及んでおり、5クラブでメインスポンサー不在となっているほか、選手への給料未払いなど次々に問題が発生している。また、イタリアでもメッシーナ(セリエB)が破産しており、サッカー界を取り巻く経済状況は順風とは言えない状態だ。

マンチェスターCが総額900億円で複数の大物選手を獲得する構想を打ち立て、レアル・マドリードはC・ロナウド選手の獲得に移籍金210億円、週給6300万円を用意していると報じられたが、こうした巨額の資金が動く選手獲得合戦の過熱に歯止めをかけなければ、ブラッター会長が懸念する以上の事態を招きそうだ。

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