カリスマ書店員選、2008年度上半期「最高に面白い本」60冊発表。

2008/09/03 23:57 Written by コジマ

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近年は年齢を問わず本離れが指摘されているが、映画やドラマの原作になることは現在も多く、そうした映像作品から書籍に興味を持つ人も少なくない。また、映像では時間など制約があるため表現できることが限られており、原作を読むと内容の厚さに驚かされることもしばしばだ。

こうした中で、雑誌「一個人」最新号が、本選びのエキスパートである書店員9人による2008年度上半期「最高に面白い本」60冊を発表した。

選考に当たったのは、有隣堂、丸善、リブロ、三省堂書店、紀伊國屋書店、ブックファースト、青山ブックセンターといったいずれも全国に支店を持つ大手書店のカリスマ店員9人。各部門によって1〜4人が担当している。

まず、4人が選考した文芸部門で1位に輝いたのは、吉田修一の「さよなら渓谷」(新潮社)。「パレード」で山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で芥川賞を受賞し、「東京湾景」がドラマ化されて話題になった吉田修一だが、これまでの作品と違う殺人事件を題材とした「悪人」で新境地を開拓した。「さよなら渓谷」でも幕開けは殺人事件で、それをきっかけに平凡な若夫婦の秘密を暴き出す問題作となっている。冒頭から読み手を引き込み、選考に当たった書店員も「中盤以降、予想を超える物語に、今までの小説では味わえなかった気持ちにさせてくれました」(同誌より)と絶賛だ。

同部門2位は平野啓一郎の「決壊(上・下)」(新潮社)、3位は新人作家・和田竜の第2作「忍びの国」(新潮社)、4位は伊集院静の「羊の目」(文藝春秋)となっており、5位にはドラマの30年後を描いた矢作俊作の「傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを」(講談社)が選ばれている。

続いて、文庫・文芸部位の1位は町田康の「告白」(中央公論新社)。明治26年に大阪・河内地方で実際に起こった大量殺人事件「河内十人斬り」を、大阪生まれの作家が独特のリズムで描いた。選考者は「凄惨な事件を扱っているのに面白く読めてしまうのは、町田康ならでは」(同誌より)と評している。

同部門の2位は飯嶋和一の「黄金旅風」(小学館)、3位は古川日出男の「ベルカ、吠えないのか?」(文藝春秋)、4位は映画化された伊坂幸太郎の「死神の精度」(文藝春秋)、5位はシリーズ化されている小路幸也の「東京バンドワゴン」(集英社)が選ばれた。

このほか、文庫・ミステリー部門1位は坂口安吾の「明治開化 安吾捕物帖」(角川書店)、文庫・時代歴史部門1位は星亮一の「偽りの明治維新 会津戊辰戦争の真実」(大和書房)、新書部門1位は小山登美夫の「現代アートビジネス」(アスキー・メディアワークス)、ノンフィクション部門1位は佐野眞一の「甘粕正彦 乱心の曠野」(新潮社)、池田清彦/養老孟司の「環境問題」(新潮社)、森達也の「死刑」(朝日出版社)となっている。

同号では本谷有希子、山崎ナオコーラ、桜庭一樹、森絵都、浅田次郎、和田竜、家田荘子、猪瀬直樹、佐木隆三、C.W.ニコルらによるオススメ本の紹介など、本に関する記事が満載されている。

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