環境団体の調査船「鯨肉横領」告発、証拠入手に「窃盗」の指摘も。

2008/05/15 23:14 Written by コジマ

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資源、文化、動物愛護など、さまざまな論点で争われている捕鯨問題。79カ国が加盟する国際捕鯨委員会(IWC)では捕鯨支持派32カ国と反捕鯨派44カ国(中立派3カ国)が激しく争っているが、海に面していない国を巻き込んだり、捕鯨国のバッシングのネタにしたりなど、政治的な思惑が濃く反映されている。本来の論点とのズレが指摘されているのだ。

今年に入ってからは、環境保護団体「シーシェパード」が捕鯨船に体当たりし、それをオーストラリアが国家規模で擁護したことが話題となった。これに対し、自称・米テキサス州在住の男性が「日本は、とても礼儀正しい文化・社会だから我慢するんだよ」と擁護し、反捕鯨団体に向けて「テキサスのステーキ屋に来て、ステーキ食ってるのを抗議しにきたら、俺は奴等と戦うぞ! やってみろ、このボケ!!」などと激しく非難する動画を「YouTube」に投稿して世界から注目を浴びた。

シーシェパードは日本以外の捕鯨船にも攻撃を加えており「環境テロリスト」とも呼ばれているが、もともとは環境保護団体「グリーンピース」出身の活動家が設立したもの。グリーンピースはシーシェパードほど過激な行動を取っているわけではないものの、各種環境問題とともに反捕鯨を訴えている。

そのグリーンピースの日本支部が、南極海で調査捕鯨をしていた「日新丸」が4月15日に東京港へ戻った際、乗組員が鯨肉の一部を自宅に送っていた疑いがあるとし、乗組員12人を業務上横領容疑で東京地検に告発状を提出した。同時に、農林水産省などに対して日本鯨類研究所や委託を受けている共同船舶(乗組員が所属)による調査捕鯨の停止を求めている。

グリーンピース・ジャパンによると、「日新丸」の帰港後に乗組員のうち12人が鯨肉が入った段ボール箱計47箱をそれぞれの住所に発送したとの情報を別の乗組員から受けて調べたところ、そのうちの1つに鯨ベーコンの原料となる「畝須(うねす)」と呼ばれる鯨肉が23.5キロ(市場価格11万〜35万円相当)入っていることを確認したという。同団体の佐藤潤一・海洋生態系問題担当部長は、都内で開いた記者会見で「証拠品」を示すとともに、「正規に流通する前に鯨肉が出回っている状況もあり、販売目的だった可能性がある。税金が使われる調査捕鯨が、一部の関係者の利益になっている」(共同通信より)と述べている。

ところがこの「証拠品」、グリーンピース・ジャパンが送り主である乗組員と運送会社に無断で倉庫から持ち出し、中を開けたうえに荷物を食べて鯨肉であることを確認したという。運送会社は荷物が見つからないため警察に遺失物届けを提出しており、「このような形で発見され驚いている」(NHKより)と困惑している様子。

一方、共同船舶は「乗組員は1人10キロの鯨肉を土産とするほか、3.2キロまでの購入が認められている。また、他の乗組員が買わなければ、その分の購入も可能だ」(毎日新聞より)と不正を否定し、「勝手に段ボールを開けたことは盗みであり、許されない」(産経新聞より)と怒りをあらわにしているが、グリーンピース・ジャパンの弁護士は「横領行為の証拠を入手するためで違法性はない」(同)と主張しているのだ。

たしかに違法に入手したものも証拠として使えるが、今回の行為は窃盗である疑いが強い。ネットでもこの行動を非難する声がほとんどで、調査船乗組員による「鯨肉横領」よりも、グリーンピースの犯罪性がクローズアップされているようだ。

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