6連勝でJ1・ナビスコ杯ともに首位、ピクシー名古屋はなぜ強い?

2008/04/18 21:33 Written by コジマ

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近年は優勝争いに加わらず、J2降格もしないという「万年中位」状態が続いているJ1の名古屋。昨季は開幕4連勝の好スタートを切ったものの、ケガなどで離脱する選手が続出したことから、最終的に11位に終わった。J2への降格もギリギリだったため、最終節ではセフ・フェルホーセン前監督やフロントに対してサポーターの不満が爆発する一幕もあったのだ。

そんな名古屋が、ドラガン・ストイコビッチ新監督の指揮のもとで今季は快進撃を続けている。開幕戦こそ京都に引き分けたものの、その後は5連勝。第6節を終了した時点で首位に立った。一方、ナビスコ杯予選リーグでも初戦で京都に敗れて以降、アウエーとホームで神戸に連勝し、グループAの1位。合わせて公式戦6連勝中なのだ。こうして快進撃を続けるピクシー名古屋、その強さの秘密を中日新聞が分析している。

古巣の監督就任に当たって、ストイコビッチ監督が最も重視したのは選手とのコミュニケーション。中心選手には敬意を払って良好な関係を築き、若手選手には優しく激励するなど、巧みに選手のやる気を引き出しているという。キャンプで笑顔があふれていた様子は、ホルガー・オジェック前監督と選手がギクシャクしていた浦和と対照的だったのだ。

特にFW玉田圭司に対しては、キャンプで自身の部屋へ呼び「君は、Jリーグナンバーワンの選手だと思っている。去年ほとんど試合に出ていないのが信じられない」「今年はJリーグのMVPを取るつもりでプレーしてくれ」と語ったのだとか。さらに、特性を生かしたプレーを求めたことから玉田選手は奮起し、リーグ戦はまだ1ゴールにとどまっているものの、重要な場面での活躍が目立っている。また、日本代表にも1年8カ月ぶりに復帰したのだ。

ストイコビッチ監督の人心掌握術は、自身がエースを務めていた時代に名古屋の指揮を執っていたアーセン・ベンゲル監督(現アーセナル監督)を手本としている模様。しかし、それを踏襲するだけでなく、日本で7年間プレーした経験を生かして欧米人には分かりづらい日本人の「内に秘めた闘志」を理解し、選手に接しているという。こうした名古屋の変化は他チームの選手からも分かるようで、第5節で敗れた横浜MのDF中澤佑二選手は「選手はそんなに代わっていないのに監督が代わってモチベーションが高くなった気がする。特に玉田なんかよみがえった感じ」(中日スポーツより)と語っているのだ。

また、戦術も天皇杯で優勝したベンゲル監督時代と同じ4-4-2のシステムを採用しているのだけど、当時のような突破力のあるサイドアタッカーや強力なストライカーが不在なことを把握しており、MFの動きを流動的にしてその穴を埋めている。フランス時代の経験から、左利きのMFマギヌン選手を右、右利きのMF小川佳純選手を左に配することで中央に入って利き足でのシュートを相手に意識させ、他選手の攻撃参加を促し、攻撃力を向上させているのだ。

さらに、ナビスコ杯ではリーグ戦とは大きくメンバーを入れ替えるなどの試みを行っている。特に第3節の神戸戦(ホーム)では、主力7人をベンチから外し、リーグ規約第42条の「その時点における最強のチームをもって試合に臨まなければならない」という条件を満たすギリギリの布陣で臨んだ。これによって、ともに得点した「89分の男」ことFW杉本恵太選手とベテランのMF藤田俊哉選手はもちろん、多くの控え選手が活躍し、チームをよりいっそう活性化させている。

こうして順風満帆なピクシー名古屋だけど、昨季の悪夢が脳裏をよぎり手放しでは喜べない状態のサポーターも少なくないという。現在勝ち点1差で2位の鹿島と対戦する6月28日の第14節には、この快進撃が本物であることが分かりそう。また、勢いを取り戻した浦和と対戦する5月25日のナビスコ杯予選リーグ第4節も注目なのだ。

ちなみに、今季公式戦で唯一の敗戦となったナビスコ杯初戦の京都戦で、ストイコビッチ監督は手違いからスーツを持参できずジャージで指揮を執ったことから、「もう2度とジャージではベンチに入らない。だからもう負けないよ」(中日スポーツより)と宣言している。

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