ファンタジー映画はなぜ米国外でヒット? 「ライラの冒険」興収は4倍。

2008/03/18 22:22 Written by コジマ

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2月、米大手映画制作会社ニューラインシネマが40年の歴史に幕を閉じることが報じられた。完全に消滅したわけではないのだけれど、これまで独立していた運営は完全にワーナー・ブラザースが担当することになったのだ。同社の最後の作品となったウィル・フェレル&ウディ・ハレルソン出演のコメディ映画「Semi-Pro」(2月29日全米公開)は、全米興行収入で初登場1位を獲得するなど順調な興行を重ねている。

ニューラインシネマが完全吸収されることになったきっかけは、同社が海外での配給会社を持っていなかったこと。海外配給権を製作前に販売することで製作費を獲得する手法を取っていたのだけど、近年は海外での興行成績が米国のものを大きく上回っていることから親会社のタイム・ワーナーが非効率と判断し、独自に海外配給を行っていくことにしたのだ。

実際、同社の吸収発表後に日本公開されたファンタジー映画「ライラの冒険 黄金の羅針盤」は、総製作費250億円をかけた超大作であるにもかかわらず米国内の興行収入は7000万ドル(約70億円)にとどまり、一方で海外での興収は2億6400万ドル(約264億円)を記録。4倍近い差がついている。

そのほかにも、2005年公開の「ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女」は米国内2億9200万ドルに対し米国外で4億5200万ドル、07年公開の「スターダスト」も同じく3900万ドルに対して9700万ドルと、「ライラの冒険〜」ほどではないけれど近年のファンタジー映画は米国内外で大きな差が生じており、海外市場での成績が70%に達する作品が増えているという。

米国外でこうしたファンタジー映画がヒットするのはなぜなのか。「ナルニア国物語」シリーズを手がけている米ウォルト・ディズニー・モーション・ピクチャーズ・グループのマーク・ゾラディ社長によると、「地球上の特定の場所を舞台にしていないことです。たとえば、『ナルニア国物語』で描かれる場所は具体的な土地ではない。その一方で、テーマは善と悪の戦いとか、忠誠心とか家族の団結といった普遍的なものです」(バラエティ・ジャパンより)とのこと。米国内の描いた作品よりも海外の人たちに受け入れやすい内容、というのが人気の秘密のようなのだ。

ニューラインシネマを完全吸収したワーナー・ブラザースだけでなく、ユニバーサル・ピクチャーズが今年から海外部門を完全に独立企業にするなど、各社とも海外配給への強化を打ち立てている。「ライラの冒険〜」の続編製作は日本の興行成績次第ともいわれており、今後、ハリウッドの大手映画会社は海外市場に向けた作品製作に傾倒していく可能性もあるのだ。

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