漫画家荒木飛呂彦のイラストが米科学誌表紙に、論文をイメージ化。

2007/09/07 18:49 Written by コジマ

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独特の絵柄と世界観で読者を魅了している漫画家の荒木飛呂彦。ぼくが出会ったのは初連載作品「魔少年ビーティー」で、物語で展開される手品やトリックの数々に引き込まれたのだ。1987年には大長編「ジョジョの奇妙な冒険」の連載が始まり、現在は第7部の「スティール・ボール・ラン」を「ウルトラジャンプ」(集英社)で連載中。登場人物が使う「波紋」や「スタンド」などの特殊能力は、多くの人を熱中させているのだ。

ルネッサンス絵画のような画風に、世界各国を舞台にした緻密なストーリー、さらには洋楽のグループ名や曲名をフィーチャーしている(ジョジョの名前自体もビートルズの「ゲット・バック」に出てくる歌詞から取ったもの)ことから海外でも人気で、03年にはパリで個展を開催し、ネットでは熱く語り合われているのだそう。特にフランスとイタリアでは大人気みたい。

その荒木飛呂彦のイラストが、権威ある米科学誌セルの表紙を飾ったのだ。掲載されたのは9月7日付の第130巻で、同誌に載った日本人研究者の論文をイメージ化したのだそう。セル誌の表紙を日本人漫画家が描くのは、かなり異例のことなのだとか。

イメージの元である論文を発表したのは、自然科学研究機構生理学研究所の瀬藤光利准教授。三菱化学生命科学研究所分子加齢医学研究グループのリーダーでもあるのだ。同誌の表紙には「Ubiquitin Ligase for Synaptic Tuning(シナプス調整のためのユビキチン結合酵素)」とあるのだけど、瀬藤准教授は、神経細胞同士のつなぎ目で脳の中で情報のやり取りをするシナプスとたんぱく質を分解するユビキチンについて研究し、「壊し屋たんぱく質(SCRAPPER=スクラッパー)」と名付けた分解酵素を発見した。平たく言うと脳神経を破壊する悪いヤツを見つけたわけで、これを役立てればアルツハイマー病や脳梗塞、統合失調症など脳の病気を治療できるかもしれないという、すごい発見なのだ。

この世紀の大発見をした瀬藤准教授が荒木飛呂彦の大ファンだったことから、つてをたどって論文内容のイメージ化を依頼し、荒木飛呂彦が快諾。「スクラッパー」を「スタンド」になぞらえて擬人化し、標的とするたんぱく質を破壊していくようすを描いた。脳に侵入して細胞を破壊していくスタンド「スクラッパー」、ぜひ「スタープラチナ」と闘わせてほしいのだ。

科学者が漫画家にイラストを依頼するのは珍しいことだと思うけど、瀬藤准教授は1969年生まれの38歳。「ジョジョの奇妙な冒険」連載開始当時は16歳なので、荒木飛呂彦の世界にどっぷりとハマったのかもしれない。これからこうした世代が重要研究を発表していけば、さまざまな日本の漫画家が科学誌の表紙イラストを手がける可能性があるのだ。でも、漫☆画太郎のイラストが表紙を飾ったらちょっといやだなあ(笑)。

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