太宰治の「人間失格」がバカ売れ、秘密は人気漫画家による表紙。

2007/08/17 23:49 Written by コジマ

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「走れメロス」「斜陽」に並ぶ太宰治の代表作で、玉川上水に入水自殺する1カ月前に脱稿された長編小説「人間失格」。人とうまく接することのできない主人公「自分」の葛藤と精神的混乱を描いた私小説風フィクションで、夏目漱石の「こころ」と新潮文庫の累計発行部数でトップを争っているのだ(ちなみに、「坊ちゃん」が6位、「斜陽」が10位となっている)。

「恥の多い生涯を送って来ました。」で(「第一の手記」が)始まるこの近代文学の金字塔が、約1カ月半で7万5000部を売り上げるという古典的文学では異例の事態となっているのだとか。売れているのは1952年初版の新潮文庫ではなく、90年初版の集英社文庫。今年6月に新装版を発行したところ、この「バカ売れ」状態が発生したのだ。

その秘密は、新装版「人間失格」の表紙に、「ヒカルの碁」や「DEATH NOTE」などで知られる人気漫画家、小畑健のイラストを使用したこと。「DEATH NOTE」の主人公、夜神月を思わせるような学生服を着た青年がイスに腰掛け、タイトルの「人間失格」も漫画を想起させるようなデザインとなっている。

このミスマッチが話題となり、特に漫画を読む層からの反応が強く、異例の売れ行きにつながったもよう。レコードやCDで内容ではなくジャケットを気に入って買う“ジャケ買い”の書籍版のような現象なのかな。ぼくも書店でこの本を見かけたときにびっくりしたし、初めは小畑健の新作漫画が出たのかと勘違いしたのだ。

小畑健は河出書房のムック「文藝別冊 菊地秀行」の表紙を手がけており、いくつかの小説に挿絵を提供している。同文庫編集部はこれに目をつけたのか、表紙が抽象画だった従来版の持つ「いかにも名作」というイメージから脱却するため、この人気漫画家に依頼したのだそう。小畑健との太いパイプを持つ集英社ならではのコラボレーションなのかも。

名作と人気漫画家のコラボに賛否が分かれそうだけど、以前に角川文庫の夏目漱石作品の表紙を漫画家のわたせせいぞうが手がけて話題になったことがあり、低迷する出版界、特に小説部門における起死回生の手法となるかもしれない。「人間失格」並みの名作の表紙を漫☆画太郎が手がけたら、すごくインパクトがありそうなのだ。

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