投手失格を経てメジャー復活、打者R.アンキール選手の今後に期待。

2007/08/10 13:00 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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MLBセントルイス・カージナルスのファンにとって、リック・アンキールという選手は、実に複雑なステータスの人物であります。

「USAToday」紙から最優秀高校生選手に選ばれるなど、プロ入り前からその投手としての実力を買われていたアンキール選手。ドラフト指名でカージナルスに入団。2年間のマイナー修行を経て2000年に開幕メジャー入りを果たします。20歳という若さで先発投手として活躍し、11勝7敗、防御率3.50の成績をはじき出し、同球団の若手スター選手として活躍しました。

ところが同シーズンのプレーオフ、対ブレーブスとの第1戦で先発選手として登板した際、突然の暗転が彼を待ち受けていました。何かが崩れるかのように、アンキール選手はいきなりコントロールを失ってしまったのです。ストライクはおろか、捕手がまともにキャッチできないほどの暴投……。その結果、1イニングにワイルド・ピッチ5つという、1890年以来初の「記録の樹立」まで果たしてしまいました。ファンのショックと失望は、そりゃあ大きかった……。

その後、彼の選手人生は下落の一方。マイナー行きを宣告され、3Aからさらにルーキー・リーグにまで落ちた彼は、その後もケガや2度の手術などでなかなか復活が果たせずにいました。

ようやく2004年に、再びメジャーで中継ぎとして登板が出来る様になったアンキール投手。しかし、このまま投手として復活を目指すのか……と誰もが思っていた2005年に、突然彼は球団の反対を押し切って打者転向を宣言。これにはさすがに今まで辛抱強く彼を応援していたファンも開いた口が塞がらず、その無謀さに失望の声も。さらにその翌年も再度のケガで前に進めない状態が続き、もしかしたらこのまま引退? なんてことも囁かれました……。

でも、彼は今シーズン帰ってきたのです。3Aでの開幕を通達されていた彼は、地道に成績を積み上げ8月9日の今夜、とうとうブッシュ・スタジアムに戻ってきました。苦節7年。いく度もの故障にもへこたれず、復活を果たした彼の初マウンドの際には、球場中の観客が立ち上がって拍手喝采で迎えたのです。

そして運命の瞬間。7回裏4度目の打席で、なんとアンキール選手は2ラン・ホームランを放ちました。再度スタンディング・オベーションで祝福され、カーテンコールに応える彼。滅多に感情を表さないラルーサ監督も大興奮でした。カージナルス・ファンにとっても、きっと長年にわたって忘れられない瞬間が、今夜生まれたのです。

投手失格の烙印を押され、意を決して「打者転進」という大きな賭を打ったアンキール選手は、あの20歳だった投手時代から本当に大きく成長して戻ってきました。これからも、活躍を祈ります!

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