TBSラジオが「放送禁止歌」一挙放送、本来のメッセージを探る。

2007/07/20 23:55 Written by コジマ

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ブルーハーツの「終わらない歌」やハイロウズの「ガタガタゴー」を聴いていると、歌詞が入っていなかったりピー音が重ねられていることが分かる。これは放送禁止用語を歌っているためで、こうした曲は星の数ほど存在するのだ。

誰かを傷つけるような言葉は公に出すべきではないだろうけど、その辺の判断は微妙なところ。中には「なんで?」と思うような歌が「放送禁止歌」に“指定”され、その多くが現在も日の目を浴びていない。こうした放送禁止歌20曲を、TBSラジオが7月22日午後7時からの特別番組「TABOO SONGS〜封印歌謡大全」で一挙に放送することが決定したのだ。

そもそも「放送禁止歌」とは何なのか。「放送禁止歌」の正式名称は「要注意歌謡曲」。この指定制度は1959年に日本民間放送連盟が開始し、指定された曲の一覧表が民放各局に配布されていた。指定曲はC〜Aの3段階に分けられ、Cは「不当な歌詞の部分削除」、Bは「歌詞全般の使用制限」、Aは「詞・曲ともに放送に適さない」。ただ、これはあくまで“目安”であって、拘束力を持つものではない。つまり、民放各社が自主的に規制していたのだ。

この対象には、超有名な岡林信康の「手紙」「チューリップのアップリケ」(ともに内容が部落問題に触れる)やザ・フォーク・クルセダーズ「イムジン河」(朝鮮半島の統一を歌ったもので、内容が「南」に寄りすぎていると朝鮮総連からクレーム→発売禁止)をはじめ、高田渡 の「自衛隊に入ろう」(国の意向に沿わない)、美輪明宏の「ヨイトマケの唄」(歌詞に差別用語が含まれる)、ピンクレディー の「SOS」(イントロのモールス信号が「SOS」で放送に適切でない)、なぎら健壱の「悲惨な戦い」(大相撲を揶揄し、「若秩父」「木村庄三郎」「朝潮」「NHK」などの固有名詞が登場する)、つぼいノリオの「金太の大冒険」(内容がわいせつ)などが選ばれている。北島三郎のデビュー曲「ブンガチャ節」なんて、「キュキュキュキュキュ」という合いの手が「ベッドのきしむ音を連想させる」として指定を受けているのだ。

ところが、こうした「要注意歌謡曲」の指定は83年に廃止されている。にもかかわらず、それ以降も「放送禁止歌」はなくならず、85年リリースであるおニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」や、93年リリースであるブランキー・ジェット・シティの「悪い人たち」もこれに入っているという。

忌野清志郎は、88年に自身がパーソナリティーを務めるFM大阪の番組でRCサクセションの「ラブ・ミー・テンダー」や制作に参加した山口冨士夫の「谷間のうた」を放送禁止にされたことに対して、タイマーズ名義で出演したフジテレビ系「夜のヒットスタジオR&N」の生放送でキー局のFM東京を罵倒しまくる曲を予告なしに披露した。過激な歌詞が多い清志郎、これらの曲以外にも「サマータイム・ブルース」や「君が代」など多くの歌が放送禁止となっているのだ。

なぜいまでも規制が行われているのか。このことについては、森達也の「放送禁止歌」(解放出版、知恵の森)や、フジテレビ系ドキュメンタリー番組「NONFIX」の「『放送禁止歌』〜唄っているのは誰?規制するのは誰?〜」で詳しく説明されているので、ご参考に。これらからは、テレビ局が「抗議に対抗する余裕がなく、安易な方向に流れた」ため、現在ではこうしたことにならないように努力していることが読み取れるのだけれど……。

その「放送禁止歌」20曲を2時間にわたって一挙に放送することになったTBSラジオでは、4月に「封印歌謡大全」(三才ブックス)を出版した石橋春海が封印された背景など1曲ずつ解説し、ライムスターの宇多丸も参加。“問題”とされていた部分も放送するという。

その目的として、プロデューサーの三条毅史氏は「日本の音楽史の遺産として見直す機会をつくりたかった。1つの言葉だけを取り上げて判断するのではなく、歌全体のメッセージに耳を傾けてもらえれば」(スポーツニッポンより)と語っている。曲に込められた本来のメッセージを解き明かすというのだ。忌野清志郎の曲で、以前ライブで演奏して話題となった「あこがれの北朝鮮」というものがある。この曲を聴かせるとたいていの人が「これはマズいでしょ」という感想をもらしていたのだけど、きちんと聴くと実は世界平和を訴えたメッセージ・ソングであることが分かる。こうした本来の意味とかけ離れたイメージを持たれている曲は、けっこう多いと思うのだ。まあ、何も北朝鮮を題材にしなくても、という気持ちはあるのだけれど。

なんにせよ、どんな曲がかかるのか楽しみなのだ。スポーツニッポンに掲載されている放送予定曲は以下の通り。

渡辺はま子 「何日君再来」
岡林信康 「手紙」
山平和彦 「放送禁止歌」
RCサクセション 「サマータイム・ブルース」
ザ・モップス 「ブラインド・バード」
克美しげる 「さすらい」

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