ひとつの心臓が3人の体に、心臓移植が繰り返された珍しいケース。

2007/05/14 10:59 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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臓器移植先進国の米国。2006年度の全世界の心臓移植手術のうち、60%が同国で行われたという数字をみても、その件数の多さが伺えます。日本では1968年に1件、その後30年余りはゼロ、そして1999年から毎年10件以下の手術数という統計結果がありますが、米国では80年代半ばに1,000件を超え、1990年からは毎年2,000件以上という数字。この中には米国人以外にも、日本を含んだ海外から渡航した患者が受けたケースも含まれています。

このように心臓移植自体は珍しくない米国ですが、このたび極めて珍しいケースが報告されたそうです。なんでもいったん1人の患者に移植された心臓が、その後また他の患者に移されたというもの。

ロサンゼルスの病院で、1年ほど前からドナーを待っていた45歳になる心臓疾患の男性は、自分の体型やそのほかの特徴に適合する心臓になかなか巡り合うことが出来ていませんでした。しかしその間もどんどん病状が悪化し、危険な健康状態になっていたそう。

そこに運び込まれたのが、最近亡くなった他の男性の心臓。見事に適合すると判ったこの臓器ですが、実はこの亡くなった男性、自身もその1週間前に第3者から心臓移植を受けていたのです。しかも、亡くなった理由が心臓移植の結果によるものではなく、他の理由であったとのこと。心臓自体はまだ健康な状態だったのです。

ひとつの心臓が、ほぼ同時に2人の患者に適合するということがあっても、それはおかしくはないでしょう。しかし今回のケースは奇妙な偶然が重なりました。

心臓自体が問題ないのなら、もう1人の患者さんの命が助けられるのではないか? そう考えた医師団が、心臓の再度移植を決意。拒絶反応が高まることや、心臓自体が弱まることなど、懸念はあったそうですが、今のところ3人目の体を動かしている心臓に問題はなく、しかも男性の経過も良好だそうです。

色々な不幸や偶然が重なった末の出来事ではありますが、2度の移植を乗り越えた心臓とは……。なんとなく体の神秘や、医学の力を感じさせるニュースですねぇ。

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