「楽しさ」と「学力」は関連性なし? 米国の数学教育に波紋広がる。

2006/10/23 13:10 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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ウォール真木は長女の小学校によくボランティアで行っているのですが、日本の学校は内装がシンプルなのに比べて、こちらの教室は様々な飾りや教材が壁に飾られていたりして、実にカラフル。授業の形式も先生が1人黒板の前に立ち、時間割にそってみんなに同じ教科を教えるというのではありません。例えばグループごとに別れて、ひとつの班は先生と作文のチェック、ひとつの班は算数の計算練習、そしてもうひとつの班は図書館にお出かけ……、という風にまったく別々のことを同時にこなしているのです。


しかも午後には授業中におやつをほおばりながら勉強する時間も。もちろん私語をしない、先生の話をよく聞く、などの決まりはありますがクラス内の雰囲気は随分のびのびとしています。そして一番の驚きは教科書がないということ。教材は授業ごとに準備されるプリントや見て触れる素材が中心です。お金の計算やカレンダーなど、生活に密着した身近な内容で算数の問題を紹介して、先生は生徒の興味を引き出そうといろいろな工夫を凝らしてくれているようです。

アメリカでは多くの教育者や親の間で「生徒は楽しく学ぶべき」という共通した概念が存在します。生徒に無理強いはしない、退屈な授業は極力避ける、そしていかに生徒に自身を持たせ、彼らのほうから自主的に教科に興味を持たせるか……、それが学校教育の永遠かつ最大の課題みたいですねぇ(笑)。日本の教育ではもっと「規律」とかが大切にされていたような気もするんですが、そういうのはとりあえず二の次なのかしら?

しかしこういったアメリカ的な考えが、必ずしもよい成績にはつながらないのでは? という研究結果がこのほど発表され、教育界で波紋を呼んでいるとか。米シンクタンクのブルッキングス研究所という所のブラウン教育政策センターが世界各国の小学校4年生、そして中学2年生の生徒らを対象に実施したアンケートでは、彼らの算数・数学に対する好き嫌いと、学力の関連性を調査。その結果を分析したところ、中学2年生のグループで「数学は楽しい」と答えた上位10カ国では学力が平均以下、逆に下位10位は全て平均以上の優秀な成績結果だったとか。算数・数学を「日常の身近な生活」を基にして教えている国ほど成績が悪いことも判明したそうです。

「数学が楽しくない」と答えつつ数学の学力の高い国は、日本、香港、オランダなどで、アメリカは「生徒が感じる楽しさ」と「実際の学力」のレベル両方ともがテスト対象になった各国の間で、ほぼ真ん中だったそう。

しかし今回のブラウン教育政策センターによる研究で「楽しくない授業をしたほうが数学の学力が上がる」と結果付けるのは、まだまだ単刀直入すぎるかもしれません。同センターでは「成績の良い国はそのほとんどで、生徒への要求の水準が高いようです。よって生徒は数学の勉強に対してプレッシャーを感じており、自信もないと答える傾向があるのではないでしょうか」とコメントしております。なにはともあれ、もっと各国の教育的背景を見つめるべきなんでしょう。

まあ、最後に個人的な意見をいえば。ウォール家の長女はまだ小学校2年生ですし、とりあえずは彼女らしくノホホンと楽しく学校生活を送ってもらいたいなぁと(笑)。3年生に上がれればそれで上等っす。

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