自己診断テストでチェック、いびきと居眠り多い人は早期治療を。

2006/10/10 20:07 Written by コジマ

このエントリーをはてなブックマークに追加


気候が穏やかなこの季節、昼食後、勤務中でも猛烈な眠気に襲われることも多いのでは? でも、睡眠をしっかり取っていても居眠りが多い人や、就寝中の大きないびきを指摘されている人は要注意。寝ているときに呼吸リズムが乱れて一時的に窒息状態になる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」である可能性が高いのだ。日経BPのコラムでは、京都大学の神経内科医である美馬達哉氏が、さまざまな側面から見たSASの恐ろしさを紹介している。自己診断テストでSASの可能性が疑われた場合は、早めの精密検査と治療をしたほうがよさそうなのだ。

美馬氏が述べているように、日本でSASがクローズアップされたのは、2003年に起きた山陽新幹線の居眠り事故から。この事故は、岡山駅で自動列車制御装置(ATC)が作動したことで居眠りが発覚したのだけど、精密検査を受けたこの運転士がSASと診断されたことで注目されたのだ。SASには、鼻や喉など空気の通り道が詰まって物理的に呼吸ができなくなってしまう「閉塞性SAS」と、脳から呼吸の命令が乱れる「中枢性SAS」の2種類があり、前者は人口の1〜5%がかかっているといわれるほどありふれた病気。山陽新幹線の事故を受けてJR西日本が運転士らに検査を実施し、約5500人中15人がSASと診断され、在来線の運転士7人が乗務停止を言い渡されたそうなのだ。

SASで定義されている「無呼吸」とは10秒以上の呼吸停止のことで、この「無呼吸」が1時間に5回以上または7時間に30回以上あるとSASと診断される。窒息状態が短いため目が覚めることが少なく、自分で気付かない人が多いのだ。激しいいびきと一晩で呼吸が数回止まることを、隣で寝ている人に指摘されて病院へ行く人も少なくない。

この「無呼吸」のせいで熟睡できなくなり、車や電車の居眠り運転につながる日中の眠気が注目されている。近頃話題の飲酒運転よりもハンドル操作ミスをする確率が高いそうなのだ。また、「無呼吸」は体にとても負担をかけ、いびきや勃起障害(ED)、高血圧、不整脈、さらには心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気を発症する確率がぐんと上がるという。

恐ろしいのが、自覚症状がほとんどない上に、職場の健康診断でも検知できないということ。精密検査を受けないと診断できないのだ。そのため、美馬氏は簡単な自己診断テストを掲載している。このエプワース眠気診断テストを見てみると、

・座って読書しているとき
・テレビを見ているとき
・公共の場所で動かないで座っているとき(会議や映画館など)
・他の人が運転する車に1時間ほど休憩なしで乗っているとき
・午後に休息を取るために横になっているとき
・座って人と話しているとき
・昼食後に静かに座っているとき(アルコールが入っている場合は除く)
・車の運転中に渋滞や信号待ちなどで数分間停止しているとき

この8つの状況に対してそれぞれ

・うとうとすることは絶対にない……0点
・時々うとうとすることがある……1点
・うとうとすることがよくある……2点
・だいたいいつもうとうとしてしまう……3点

で点数を付け、合計点数が11点以上の場合は病的な眠気があり、SASが原因の1つとして考えられるそうなのだ。また、10点以下でも家族などから「無呼吸」や大きないびきを指摘されたことがあれば、その場合もSASが疑われるのだそう。ただし、あくまで可能性があるだけなので、病院に行って精密検査を受ける必要がある。また、夜中に何度もトイレに起きることや、起床時の頭痛もよくある症状だそうなので、こうした軽い自覚症状を見過ごさないことも大事なのだ。

最近は睡眠に関する外来を設置している病院も多く、治療を受けやすくなっているのだけれど、美馬氏は、山陽新幹線の事故で広まったために他の病気のような「患者を悩ませるもの」というよりも「事故を起こす危険なもの」として捉えられている風潮があると指摘している。そのため、職を失うことを恐れて診断が下ることを嫌がる患者が多いのだそう。

SASの原因として肥満や運動不足、鼻・口の気道が詰まりやすいといった体質面なども挙げられるけど、長時間勤務や過剰な通勤時間、交代制勤務なども一因だそう。米国の試算では年間159億ドルもの経済損失が出ているそうで、社会全体で取り組まなければ解決できない問題なのかもしれない。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.