家族で入浴は「混浴」? 家族風呂めぐって県と市が対立。

2006/09/16 23:12 Written by コジマ

このエントリーをはてなブックマークに追加


すっかり涼しくなって、温泉に行きたくなる季節。秋めいた空気の匂いかぎながら、露天風呂で月を眺めるのも風流なのだ。せっかく家族やカップルで温泉に行っても混浴でない限り一緒に入れないし、混浴だったとしても周りに気兼ねして入りづらいことから、最近は「家族風呂」なんて呼ばれる貸切の風呂が人気なのだ。部屋に1つ1つ付いていたり、1軒の宿に1つしかなかったりと宿によってさまざまだけど、こうしたサービスはたしかにうれしい。忙しい日常を忘れみんなでのんびりと温泉につかることによって、家族の絆が深まりそうなのだ。ところが、こうした家族風呂に対して「待った」をかけられた温泉があるという。

その「待った」をかけられたのは、兵庫県三木市にある吉川温泉の公衆浴場「吉川温泉よかたん」など、公営の6浴場にある家族風呂。「待った」をかけたのが兵庫県だというから、これは穏やかならぬ話なのだ。実は、兵庫県は6歳以上の混浴を禁じる条例を設けており、この家族風呂が条例違反に当たるとして、今年8月下旬、この6施設に対して家族風呂の名称変更と混浴禁止を指導したのだ。こんな条例があること自体が驚きなのだけれど、家族風呂が条例でいう「混浴」に当たるのかどうかは微妙なところ。よかたんを第三セクターで運営している三木市の薮本吉秀市長は、「これまで何の指導もなかったのに、突然使用禁止と言われても理解に苦しむ。今後は、これまでどおりの営業を続けていく」と怒りをあらわにしており、県を真っ向から対立する姿勢をみせているのだ。

吉川温泉よかたんは家族風呂も含めて2002年3月に開設している。4年以上も経ってなぜ突然指導が通達されたのかというと、これも吉川市にとってはとんだ晴天の霹靂なのだけれど、同市の隣にある小野市が公衆浴場を開設する際に家族風呂の営業許可を県に申請したところ、県が却下したため、小野市が三木市の例を挙げて反論したため、県の知るところとなったのだ。こうした経緯から、薮本市長の不満は県だけでなく小野市にも波及し、「強い憤りを感じる」としている。経過を見るだけなら、反論の具体例としてよかたんを挙げただけみたいなので、同市長の発言は逆恨みのような気もするけれど、もしかしたら小野市の行動に悪意を感じたのかもしれない。一方、同じ家族風呂を設置して指導を受けた城崎温泉擁する豊岡市は、県の指導に従って家族での利用を禁じる「ただし書き」を掲示するそうなのだ。

ここでもう一度注目するのが、6歳以上の混浴を禁じるという兵庫県の条例。公衆浴場を男女別にすること(=混浴を禁ずること)は、おそらくすべての都道府県の条例で定められているのだけれど、年齢を制限しているところが目を引く。つまり、小学校に入ったら、女の子はお父さんと男の子はお母さんと一緒に風呂に入ってはいけないというのだ。朝日新聞によると、滋賀県も同様の条例(8歳以上)を設けているらしいので、兵庫県だけの“珍条例”なわけではなさそうなのだけれど、ここで問題となってくるのが、「家族風呂が混浴か」ということ。まあ、男女が一緒に入る以上、混浴には違いないのだけれど、これを家族に適用するのは行きすぎだという意見が出てもおかしくない。

滋賀県は知事が風紀上支障がないと認めた場合はこの条例の対象から除外されることから、人気におされる形で96年から家族風呂にこれを適用している。一方、兵庫県はというと、こちらも同じように知事が認めた場合は除外するよう定めてあるのだけど、「『家族』には、事実婚や夫婦別姓などさまざまなかたちがある。本当に家族なのかどうか確認が困難で、風紀を保てない」(朝日新聞より)という判断しており、「これまでも家族風呂を認めたつもりはない」と、徹底抗戦していく構えなのだ。県に落ち度がないとは言えないけど、今までが“お目こぼし”だっただけで、条例に明記されている以上、法廷で争うとなると三木市のほうが分が悪いかも。けれど、豊岡市のように唯諾々と従ってしまっては、今後の改善は期待できないのだ。

ぼくの家庭では家族で温泉に入るという習慣がなかったのだけれど、周りの人に聞いてみると、小さい頃はよく家族で入っていたという声が少なくない。20歳を超えた現在でも家族みんなで入りに行くという女性もいたのだ。こうしたことからも分かるように、家族風呂の需要はけっこう高い。第一、子供がみんな男の子だったら、お母さんは1人で入らなきゃならないし、その逆もまたしかり。さらに、一方の親しかいない場合、性別が違う子供が6歳を過ぎると1人で入らなければならなくなってしまうのだ。こうしたことも含めて、銭湯ならいざ知らず、温泉に行ったときくらい家族で入ることを認めてもよいような気がするのだけれど……。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.