鯨肉の消費伸び悩み、調査捕鯨がピンチに?

2006/09/05 23:25 Written by コジマ

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最近、スーパーでも居酒屋でも以前と比べて見かける機会が多くなった鯨肉。価格も下がってきており、鯨肉好きとしてはうれしい限りなのだけれど、近年の高級化に伴って消費者の鯨肉離れが進み、思ったほど消費が伸びていないようなのだ。このままでは、鯨肉の売り上げを財源としている調査捕鯨に支障を来す恐れも出てきているのだとか。

古来、獣肉をあまり食べない日本人にとって貴重なタンパク源だった鯨肉。明治維新後に洋食文化が入ってきても、鯨肉は値段が低いため、庶民にとっては大事な食材だったのだ。しかし、1982年に国際捕鯨委員会(IWC)で商業捕鯨の一時禁止措置が決議されて以来、日本でも88年に商業捕鯨を中止し、鯨肉の供給源は日本鯨類研究所が行っている調査のみとなったのだ。かつてのような庶民性は陰をひそめ、消費者には「手に入りにくい高級な食材」というイメージが植え付けられてしまった。ぼくより後の世代の人たちにとって、かつては鯨肉が牛肉より安かったなんて信じられないだろうなあ。

さてさて、そんな鯨肉がなぜ最近になって市場に出回るようになってのか。先日IWCで日本などの捕鯨支持国が提案した商業捕鯨一時禁止措置の不要宣言が採択されたためなのか。いやいや、今回の宣言には強制力を持っていないため、一時禁止が解除されるまでには至っていない。実は、調査捕鯨を実施し鯨肉の価格を決めている日本鯨類研究所が、卸売価格を2割引き下げたためなのだ。今年1〜7月の販売量は前年同期比で5割増というから、目にする機会が増えて当然なのだ。

しかし、それでも消費は伸び悩んでいるようで、鯨肉の売り上げが経費の9割を占めるという調査捕鯨の継続に影響を及ぼす恐れが出てきている。前述のイメージが植え付けられた消費者の意識は、そう簡単に変わらないということなのだ。来年は調査捕鯨での捕獲量をさらに拡大するそうだけど、これではせっかくIWCで商業捕鯨再開へと風向きが変わっても消費量が伸びなければ、反捕鯨国に「別に商業捕鯨しなくてもいいじゃん」と言われかねない。いや、消費量が伸びないからこそ商業捕鯨を再開してもよいとも思うのだけれど……。

こうした調査捕鯨の危機的状況に地方自治体も協力し、和歌山県や北海道など捕鯨が盛んだった地域では給食として復活させている。小中学生に鯨肉は評判のようで、5日のニュースでも、釧路市でミンククジラの肉を使った「鯨くしカツ」を給食で出したところ、お代わりに殺到するほど人気だったという。ちなみに同市では、18〜20日に「くじら祭り」が開催されるのだ。今年が初開催で、飲食店18店が鯨肉を使った創作料理を競い合うのだとか。20食限定ながら工夫を凝らした料理が400円で食べられるというから、釧路に行く機会がある人はぜひ。

話がちょっと脱線しちゃったけど、これからの食文化を形成していく小中学生に提供するのはとても効果的。ぼくも小学生の頃に食べた鯨肉の味が忘れられず、いまだにスーパーや居酒屋で見かけるとうほうほ言いながら買ったり注文したりしているのだ。反捕鯨国の主張は、他国の食文化を否定するもの(反捕鯨国の多くが食用としてではなく、脂などを利用する工業用として捕獲していた)。乱獲はもちろんよくないけど、食文化を守るためにも積極的に鯨肉を食べたいのだ。いや、おいしいからというのが一番の理由なのだけれど(笑)。

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