「仮病欠勤」続出で大論争、英国のW杯観戦事情。

2006/06/19 21:37 Written by コジマ

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サッカー・ワールドカップ(W杯)の予選が行われているけど、決勝リーグへの進出が絶望的となった日本と違って、パラグアイ、トリニダード・トバゴと順調に勝利を重ね、40年ぶりの優勝の期待がかかるイングランド代表。英国では、このことがW杯熱をさらに高めて大いに盛り上がっているようだけど、試合を見るために仮病で欠勤する人が続出し、労働組合を巻き込んで大きな問題になっているようなのだ。

サッカー母国の英国は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドと4つの地域が代表チームを持っており(今回のW杯出場はイングランド代表のみ)、それだけでなく、移民が多い国のためW杯に出場している祖国を応援したい人も少なくない。どうしても観戦したい労働者が続出しているため企業は頭を痛めており、W杯に出場している6カ国出身の従業員を雇っているある企業では、試合の日程に合わせて業務を交代することを決めたそうなのだ。

こうした状況に“油を注いだ”と問題視されているのが、英最大労組の1つであるアミカス(電気・機械業、110万人)の提言。ウェブサイトに「World Cup fever」と題した文章を掲載、そのなかで「雇用者が仮病だと証明することはかなり難しい」ということに言及しているのだ。

当然ながら企業側は「仮病欠勤を奨励するようなアドバイス」と激怒し、この一文をサイトから削除するように求めたのだ。これに対してアミカスは、文章の全体では仮病欠勤を批判しており、「病気がウソと分かれば解雇など重大な問題になる」など警告していると反論、現在のところ削除していない。

たしかに、「(試合日に休暇を取る)権利はあっても、きちんと申請する必要があり、あまりにも多くの人が同じに日に休暇を取ろうとすれば、それは問題だろう」としているし、問題の一文のすぐあとにも「試合前後の数日に病欠を申し出ても、雇用者はその“病気のパターン”に疑いを持つだろう」「雇用者がその“病気”に対する診断書などの証明書類を提出するよう要求されたら、従業員は断ることができない」など、“仮病観戦”をいさめるような内容になっているのだ。また「許可を取らないで観戦するために家にいるならば、(雇用上の)大きな危険を冒している」ともしている。

でも、問題の一文はかなり経営者にとって不利な内容だし、「職場で試合が見られるよう、雇用者を説得すべき」などの提案も行っているため、経営者としては不快な文章であることには変わりないようなのだ。

産経新聞では、15日に行われたイングランドの試合で、欧州連合(EU)首脳会議に出席するためベルギーに入ったブレア英首相がテレビに釘付けだったことや、英下院で試合時間と重なったウェールズ関連法案の審議を早めに切り上げたために閣僚がウェールズ議員に謝罪したことを紹介している。

また、日経新聞には、イングランドの旗である「聖ジョージ旗」がロンドン市内にあふれていることに対して「差別を招く」という批判の声が上がり、ブレア首相がイングランド代表を応援すると表明したことに対しても「英首相はイングランドの首相ではない」という批判が噴出していることを紹介しているのだ。

フーリガンなど熱狂的なサッカーファンが多い英国、ブレア首相をはじめ、オアシスのギャラガー兄弟やニュー・オーダーのメンバー、ピート・ドハーティなど、有名人でも熱烈なファンが少なくない。国別対抗の一大イベントであるW杯の熱は、日本のものとは比べられないほどの社会現象になっているようなのだ。

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