英FM局、ジェイムス・ブラントの曲を放送禁止に。

2006/05/30 12:11 Written by コジマ

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2004年、英国に突如として現れた元軍人のシンガー・ソング・ライター(SSW)、ジェイムス・ブラント。その甘いルックスと歌声が英国から米国、世界へと飛び火し、日本でもフジテレビ系ドラマ「小早川伸木の恋」でシングル「ユア・ビューティフル」が挿入歌として使われていたことから人気に火がついた。しかし、そんなジェイムス・ブラントの曲が、英国のFM局エセックスFMで放送禁止という事態になったのだ。理由は、リスナーから「聞き飽きた」という要望があったためだという。

近年の英国はとんでもない数のロックバンドがデビューしているのだれど、そのロック勢にSSWとして立ち向かい、商業的に勝利したのがジェイムス・ブラントなのだ。「ユア・ビューティフル」が英シングルチャートで3週連続1位を記録、6月に発表したデビューアルバム『バック・トゥ・ベッドラム』(日本発売は12月)が英チャートで7週連続1位、1週置いて再び1位、さらに4カ月後にまたまた1位を獲得し、英国内のセールスは150万枚を突破、昨年のアルバムトップセールスを記録している。同時期にオアシスの『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』や、世界で830万枚のセールスを記録したコールドプレイの『X&Y』、ザ・ローリング・ストーンズの『ア・ビガー・バン』、ザ・ストロークスの『ファースト・インプレッション・オブ・アース』などがリリースされていることを考えると、新人としてはとてつもない快挙なのだ。

こうした人気は世界に波及し、今年3月に「ユア・ビューティフル」が米ビルボード・チャートで英国人としてエルトン・ジョン以来9年振りに1位を獲得。アルバムセールスも400万枚を超えている。そのエルトン・ジョンは「ユア・ビューティフル」が「ユア・ソング」を受け継ぐ秀作だと評し、一部では「ベックやエリオット・スミスに対する英国の回答」なんて囁かれているのだとか(いったいいつの話だ?)。Narinari.comではウォール真木が熱狂的なファンで、ジェイムス・ブラントの来日と同時に日本帰国していたため、最前列でライブを堪能したようなのだ。またウォール真木は、デジタルARENAの連載で「アメリカではヨン様的存在」と評している。

セールスだけでなく、昨年のQアワードで最優秀新人賞、今年のブリット・アワードで2部門、先日発表されたアイヴォ・ノヴェロ賞でも2部門を獲得するなど、名声も着実に手にしているのだ。しかし、今年のNMEアワードで『バック・トゥ・ベッドラム』がワースト・アルバム賞を受賞するなど、否定派も根強い。

そんな否定派に向けて、アイヴォ・ノヴェロ賞の受賞スピーチで「僕の音楽を好きじゃないろくでなし達へ、君たちは大人だ。ラジオのスイッチを消せるだろ。僕自身は聴く必要はない。自分が歌ってるんだからね。それに、女の子とうまくやれるわけさ」(BARKSより)とコメントした矢先、エセックスFMでの放送禁止が発表されたのだ。理由は、リスナーから「聞き飽きた」という要望があったからだという。

同局のクリス・コットン編成部長は「レコード会社からかなりの量を流せという圧力がかかるけど、リスナーはそれを望んでいない。業界よりもリスナーを重視した結果」だとし、「他局も見習ってほしい」と述べている。たしかに、発表から1年近く経つ曲を、来る日も来る日もヘビーローテーションでかけられたら、リスナーはたまったもんじゃないのだ。そういえば、日本でも、レコード店にいくと一時期、毎日毎日「ユア・ビューティフル」がかかっていたなあ。

先のアイヴォ・ノヴェロ賞での発言や、シドニーでカラオケを歌う女性の部屋に乱入して持ち歌を歌ったことをタブロイド紙に自慢したり、「ユア・ビューティフル」の元となったガールフレンドと別れてモデルたちと浮き名を流すなど、ちょっと「調子に乗ってる」感があるジェイムス・ブラントにとって、今回の放送禁止はよい薬になったかもしれない。


☆ジェイムス・ブラント(James Brunt)とは

本名ジェイムス・ヒリアー・ブラウント(James Hillier Blount)。1974年2月22日、英イングランド・ウィルシャー出身。軍人一家に生まれ、自身も英国軍の偵察将校だったという、ミュージシャンにしては特異な経歴を持つ。ウィンストン・チャーチルをはじめとする歴代英首相やジャワハーラル・ネルー元インド首相などを輩出した超名門ハロー校、そしてブリストル大学を経て英陸軍近衛騎兵連隊に入隊。大尉まで上り詰め、1999年にコソボ紛争へNATO軍として参戦した際には、戦車にギターをくくりつけ、夜な夜な曲作りに励んでいたとか。02年、ミュージシャンを目指して除隊、04年にシングル「High」でデビュー。05年デビューアルバム『バック・トゥ・ベッドラム』を発表、世界で400万枚以上を売り上げる。世界で通用するシンガー・ソング・ライターの1人。

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