ブライアン・アダムスやニール・ヤング、セリーヌ・ディオン、ラッシュなどを輩出してきたカナダの音楽シーン。近年は「商業主義的に陥った米国音楽にない芸術性を持っている」といわれ、世界的に注目されているのだ。そんなカナダ最大の音楽賞で“カナダ版グラミー賞”といわれるジュノー賞の2006年授賞式が2日(日本時間3日)、セクシー女優のパメラ・アンダーソンを司会にハリファクスで開かれたのだ。年間最優秀シングル部門や年間最優秀アルバム部門など4部門を制したマイケル・ブーブレが最多受賞者になったほか、ファン投票賞がシンプル・プラン、年間最優秀新人アーティスト賞にはダニエル・パウターが輝いた。最多6部門ノミネートで期待されていたニッケル・バックは、2部門にとどまった。
ジュノー賞は、1970年に音楽業界紙RPMの編集者らが設立したもので、当初ゴールド・リーフ賞という名前だったのだ。翌年に名称をジュノー(JUNO)に変更し、現在はカナダレコード協会(CARAS)が主催している。第1回の主要部門受賞者は、年間最優秀アーティスト部門の男性賞がアンディー・キム、女性賞がジャイネット・レノ、年間最優秀グループ部門がゲス・フー。ちなみに、年間最優秀アーティスト部門は、02年から男女が統一されたのだ。
昨年、アヴリル・ラヴィーンが最多3部門を制し、今年もカナダの男性ポップ・アイコンであるマイケル・ブーブレが年間最優秀シングル賞(「ホーム」)、年間最優秀アルバム賞(『イッツ・タイム』)、年間最優秀アーティスト賞、年間最優秀ポップ・アルバム賞の最多4賞を受賞。ジュノー賞におけるポップミュージックの強さが改めて強調された。
マイケル・ブーブレは、デビューアルバム『マイケル・ブーブレ』が世界で300万枚を売り上げ、2004年のジュノー賞で年間最優秀新人賞を獲得するなど、カナダが誇る男性ボーカリスト。端正なルックスで女性からの支持者が多く、その甘い歌声はメロウなポップソングにしっとりと溶けていくのだ。また、日本でも越路吹雪らがカバーしているザ・ドリフターズ(「スタンド・バイ・ミー」のベン・E・キングが在籍していたバンド)の名曲「ラストダンスは私に」などもカバーしており、ホーン・セクションが気怠く漂うなかで力強さも披露している。日本では映画「スパイダーマン2」のテーマ曲を歌っている人としてそこそこ有名なのだ。
最多6部門にノミネートされたニッケル・バックは、年間最優秀グループ賞と年間最優秀ロック・アルバム賞(『オール・ザ・ライト・リーズンズ』)の2賞のみ。ファン投票部門でもシンプル・プランに敗れてしまったのだ。ニッケル・バックの年間最優秀グループ賞の受賞は、02年、04年に続いて3回目となる。
最優秀年間インターナショナル・アルバム賞は、ブラック・アイド・ピーズの『モンキー・ビジネス』とコールドプレイの『X&Y』が受賞。またコールドプレイ……。それにしても、この部門のノミネートは上記2組と、50セント(『マッサカー』)、グウェン・ステファニー(『ラヴ、エンジェル、ミュージック、ベイビー』)、ケリー・クラーソン(『ブレークアウェイ』)。ロック・ファンとしては不満が残る選考なのだ。
このほか、年間最優秀新人アーティスト賞は、セルフタイトルのデビューアルバムが日本でもバカ売れしている“ピアノマン”ダニエル・パウターが受賞。この人の美しくキャッチーな曲は幅広いファンの支持を得ており、来年のジュノー賞主要部門、いやグラミー賞やブリット・アワードにすらノミネートされそうな勢いなのだ。そのグラミー賞やブリット・アワード、NMEアワードなどに軒並みノミネートし、軒並み受賞を逃したアーケイド・ファイアが本国の音楽賞でようやっと栄冠を手にした。とはいえ、主要賞ではなく年間最優秀ソングライター賞だけど。そして、
FUJI ROCK FESTIVAL'06への出演が決定しているブロークン・ソーシャル・シーンが年間最優秀オルタナティブ・アルバム賞を受賞。フジロック出演にハクが付いたのだ。
他の大きな音楽賞と同じくジュノー賞の授賞式でもライブが行われ、マイケル・ブーブレやニッケル・バックをはじめ、ブライアン・アダムス、コールドプレイ、ブラック・アイド・ピーズ、ブロークン・ソーシャル・シーンらがパフォーマンスを披露した。
☆ジュノー賞おもな受賞者リスト(コンプリートリストは
こちら)
●ジュノー・ファン投票賞(Juno Fan Choice Award)
シンプル・プラン
●年間最優秀シングル賞(SINGLE OF THE YEAR)
「ホーム」 マイケル・ブーブレ
●年間最優秀インターナショナル・アルバム賞(International Album Of The Year)
『モンキー・ビジネス』 ブラック・アイド・ピーズ
『X&Y』 コールドプレイ
●年間最優秀アルバム賞(Album Of The Year)
『イッツ・タイム』 マイケル・ブーブレ
●年間最優秀アーティスト賞(Artist Of The Year)
マイケル・ブーブレ
●年間最優秀グループ賞(Group Of The Year)
ニッケル・バック
●年間最優秀インストゥルメンタル・アルバム賞(Instrumental Album Of The Year)
『ベラドンナ』 ダニエル・ラノア
●年間最優秀ポップ・アルバム賞(Pop Album Of The Year)
『イッツ・タイム』 マイケル・ブーブレ
●年間最優秀ロック・アルバム賞(Rock Album Of The Year)
『オール・ザ・ライト・リーズンズ』 ニッケル・バック
●年間最優秀新人アーティスト賞(New Artist Of The Year)
ダニエル・パウター
●年間最優秀新人グループ賞(New Group Of The Year )
ベドゥイン・サウンドクラッシュ
●年間最優秀ソングライター賞(Songwriter Of The Year)
アーケイド・ファイア(アルバム『フューネラル』より3曲)
●年間最優秀カントリー・レコーディング賞(Country Recording Of The Year)
『The Road Hammers』 The Road Hammers
●年間最優秀アダルト・オルタナティブ・アルバム賞(Adult Alternative Album Of The Year)
『プレーリー・ウィンド』 ニール・ヤング
●年間最優秀ラップ・レコーディング賞(Rap Recording Of The Year)
『The Dusty Foot Philosopher』 K'naan
●年間最優秀オルタナティブ・アルバム賞(Alternative Album Of The Year)
『ブロークン・ソーシャル・シーン』 ブロークン・ソーシャル・シーン