第12回「雑誌ジャーナリズム賞」発表、大賞に週刊文春。

2006/03/18 05:09 Written by コジマ

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第12回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の授賞パーティーが17日に都内で開かれ、今年の大賞に週刊文春05年3月10日号掲載の「大不祥事と離婚発覚! 里谷多英『泥酔公然ワイセツ事件』フジテレビ社員の金メダリスト夜の大開脚」が選ばれたのだ。週刊文春は前回も、04年7月29日号掲載の「NHK紅白プロデューサーが制作費8000万円を横領していた!」が大賞を受賞している。

「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」は、出版社、新聞社の編集者約100人の投票によって、前年の雑誌に掲載された企画や記事を対象に表彰するもの。1995年に始まり、大賞、スクープ賞、作品賞、企画賞、写真賞、話題賞が設けられているのだ。昨年の第11回の受賞記事を見てみると、

大賞 : 「NHK紅白プロデューサーが制作費8000万円を横領していた!」(週刊文春7月29日号)
    「やらせ現場スクープ撮 白骨温泉は着色されていた!』(鵜飼克郎、週刊ポスト7月23日号) 
スクープ賞 : 「江角マキコ『国民年金』CMの茶番!」(週刊現代4月3日号)
作品賞 : 「早稲田系属小学校の入試は『品性下劣なり』」「早稲田系属小学校『350万円面接』の内幕」(深山渓、現代2〜3月号)
企画賞 : 「創価学会の経済力」(週刊ダイヤモンド8月7日号)
写真賞 : 「高岡早紀&布袋寅泰『W不倫キス&抱擁』現場」(フライデー7月2日号)
話題賞 : 「若村麻由美は渡辺謙夫婦がハマった新興宗教の妻だった!」(女性セブン3月11日号)
*掲載はすべて04年

作品賞の記事は印象が薄いけど、そのほかはぼくの周りでも話題になったものばかりなのだ。

そして今回は、大賞の「大不祥事と離婚発覚! 里谷多英『泥酔公然ワイセツ事件』フジテレビ社員の金メダリスト夜の大開脚」(週刊文春)のほか、スクープ賞には週刊ポストの「杉村太蔵代議士がヒタ隠す『婚約破棄と中絶』」(10月14日号)と、週刊朝日の「マブチモーター会長宅強盗殺人・放火事件で主犯が自供」報道(12月9日号ほか)が選ばれたのだ。そのほかの受賞作品については、朝日新聞の記事では明らかにされていない。

大賞受賞記事は、長野五輪女子モーグル金メダリストの里谷多英選手が東京都内の飲食店で泥酔状態で淫らな行為をし、とがめた従業員ともみ合いとなり警視庁麻布署に保護された、という世間でも話題となった“事件”をいち早く報道したものなのだ。それからしばらく各新聞や雑誌の紙面・誌面で里谷選手の話題が取り上げられたことからも、雑誌編集者にとってこのスクープは価値のあるものだったのだろう。しかしその内容は、前回の大賞記事と比べても写真週刊誌的スクープといった観が否めず、質が高いとは言えないのだ。

スクープ賞の週刊ポストの記事は、“お騒がせ1年生議員”の杉村太蔵代議士が、地元・北海道時代から交際していた女性に妊娠・中絶させたというもの。杉村代議士は、『小泉チルドレン』として、お坊ちゃま的見当違いな発言と明るい性格で国民に人気のあった人物。その闇の部分に触れたことについては評価できるけど、こちらも質が高いと言い切れないのだ。ちなみにこの記事は、1月31日に発表されたZassi.netの第2回記事大賞で大賞に選ばれている(Yahoo! JAPANのZassi.net記事大賞のページでこの記事が無料で閲覧できるのだ)。

同じくスクープ賞を受賞した週刊朝日の記事は、千葉県松戸市の「マブチモーター」社長(現会長)馬渕隆一さん宅で02年8月、妻の悦子さんと長女の由香さんが絞殺され自宅が放火された、いわゆる「マブチモーター会長宅強盗殺人・放火事件」と、同年9月に東京都目黒区で起きた歯科医師青柳文雄さん強盗殺人事件の主犯・小田島鉄男被告に対し、週刊朝日が拘置所で取材したもの。自供・事件解決に至らしめた12月9日号の「独占獄中スクープ マブチモーター会長宅強盗殺人・放火事件 黙秘の主犯が本誌に自供」と16日号の「マブチモーター事件・小田島被告が強盗殺人の全詳細を<自供>」、23日号の「本誌だけが知っている歯科医師殺人事件の全真相−マブチモーター事件」、30日号の「なぜ、凶悪犯罪を繰り返すのか?−マブチモーター会長宅強盗殺人事件」が表彰の対象になっている。こちらの記事はスクープ性も高いながら、細かい検証なども加え、質の高い記事となっているのだ。

熾烈なスクープ合戦のなかにもジャーナリズムの質的向上を願って設けられたという、米国のピューリツァ賞。日本の新聞協会賞や今回の編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞も、こうした理念にのっとって選考してほしいのだ。

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