甲本ヒロトが音楽誌「音楽と人」に登場、ハイロウズ活動休止後初。

2006/03/09 23:37 Written by コジマ

このエントリーをはてなブックマークに追加


昨年11月に公になったハイロウズの活動休止は日本のロックファンを大いに落胆させたのだけれど、フロントマンの甲本ヒロトが、音楽雑誌「音楽と人」4月号の表紙と巻頭企画に登場しているのだ。銀杏BOYZの峯田和伸との対談形式で、写真と記事が24ページにわたって掲載。バンドやライブの話題から下北沢でバイトしていたころの話、映画評に至るまで、緊張する峯田和伸を尻目に相変わらずのヒロト節が炸裂。活動休止後初の雑誌登場となったのだけれど、ヒロトはやっぱりかっちょよかったのだ。

ハイロウズ活動休止後も、ヒロトはしっかりと音楽活動をしていて、
・山下久美子のデビュー25周年記念アルバム『Duets』に参加
・映画「有頂天ホテル」(三谷幸喜監督)で劇中歌を制作
・パフィーのニューシングルのB面曲「モグラ」を制作
・シド・ヴィシャスの命日(2月2日)に行われたイベント「ST.VICIOUS DAY」にゲスト出演
・木村充揮(元憂歌団)の30周年コンサートにゲスト出演
・木村充揮のアルバム『小さな花』で「プロフェッショナル」を作曲
とかなりのモノなのだ。

彼お気に入りのブランド、グリフト・オリジナルの革ジャンにジーンズ、フェルトハットに身を包んで登場しているヒロトは、とにかく、とにかくかっちょいい。とても今年43歳には見えないのだ。さりげなく、パンクアイテムのバム・フラップ(これもグリフト製)を着けている。対談の内容は、憧れの人を目の前にひたすら緊張する峯田和伸が、ジンジャーエールを飲みまくったり、発言が暴走したりする場面があるものの、話が進んでいくうちにヒロトは彼が気に入ったようすで終始なごやかなムードだったのだ。

冒頭、いきなりファンが気になるハイロウズの活動停止に触れているけど、
(峯田が前のバンド解散後のヒマな時期に映画出演したことを受けて)「ちょうどスキマにスポっとはいったんだ。じゃあ、俺、今だ(笑)」
(編集者に「映画に出ますか」と言われて)「出ないよ(笑)」
(峯田に10年間お疲れ様でしたと言われて)「いやあ、休まなかったからねえ」
「ちょっと寂しいね。少しはね」
という程度にとどまったのだ。

甲本ヒロトと峯田和成の共通点といえば、ライブで脱いじゃうこと。特に峯田は昨年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2005」のステージ上で全裸になり、公然わいせつ罪で書類送検されているのだ。
「バンドマン、特にフロントマンがポコチン出すのは……しょうがないよ」
「あれは、僕、プロテクトだと思ってる。何かからの。(中略)自分を人が理解してるような顔が嫌だったり。なんかあるんだよ。だから、本当の自分をみてほしくないから、チンポでも見とけっていう」
「本質に迫られたくねえから隠しているんだよ。だから、とりあえずチンポを投げ出すんだと思うぜ」
「さらけだしてないし。出す気もねえし。表現するってことは、真の自分をさらけだすことじゃねえからな。」
「だけど、世間の人からはそう見られてるんじゃねえかってところが、何か癪にさわるんだよな。(中略)そう思われていることが癪にさわってさ、ポコチンだしちゃうんだよ」
「〈こんなこともやりたい、こんなことをみせたい〉って思ってもさ、一旦ステージに乗っちゃうとさ、自分のコントロールできない、制御不能なところって出てきちゃうんだよ。そこで、自分の中で闘うんだな。お客さんが自分の本質を見抜くんじゃねえかっていう恐怖と。」
「それが嫌でさ。なんかチンポでも見とけ!ってなるんだよねえ」
ちょっと、エッチな言葉言い過ぎ!(笑) ステージで脱ぐ原因がこんなところにあったとは。それにしても、ヒロトがこんなネガティブ?な発言は珍しいのだ。

メールやインターネットについても独自の見解を披露している。ローリング・ストーンズのメンバーとメールしたいと思うかと編集者に聞かれ、
「思わない。会いたいとも思わない。それこそ俺に会ってる時間あるんだったらレコーディングして新曲聴かせてって思うもん」
そうそう、インタビューに答えてる時間あるんだったら、バンド結成して新曲を披露してほしいのだ。また、インターネットについては、
「僕は一切見ない。不特定多数の人が、匿名で語ることっているのは効力ゼロだと思うのね。何も言ってないのと同じだし。言えば言うほど、その人の人生が削れていくだけだと思う。だから(インターネットで)誉められても嬉しくねえし」
うーん、なるほど。一理あるのだ。

ヒロトが大好きなティム・バートン監督の映画の話になったと思うと、
「自分の歌から地獄観て欲しいって思うね。思うけど、それは難しい。でも地獄を感じられたら最高だな」
「俺は最近認めてるよ。自分のなかのリベンジを。完全に認めるしかねえよ。僕は何かに復讐してる。それは言われなき被害妄想かもしれないし。なんでもいいんだ。ピート・タウンゼントだってそうじゃん? そんな不幸じゃなくてもいいんだ。関係ねえんだ。自分の報われてなさをさ。なんか、復讐してんだよ」
この人の魅力は、ブルーハーツ時代から変わらない“劣等生の俺でもこんなにバカなことやって楽しめるんだぜ”というスタンスにある。それは今回のインタビューでも
「ざまーみろ!だよな。俺みたいな奴がさ、でしょ?」
という言葉に集約されているのだ。あくまで自虐的。そして快楽主義。

「俺は、もう漠然と、バンドの人、バンドの一員という存在に憧れてて。今でも憧れてるから。やっぱりバンドの一員でいたいんだよね。やっぱバンドの一員ってカッコいいぜ。今もやっぱりそう思うよ」
「や、バンド最高でしょ?」
「痛快でしょ、バンドやるのって」
と、相変わらずバンドが好きなようで、次の活動もバンドで行うのは間違いないのだ。それならば、ぜひまたマーシー(真島昌利)と組んでほしい。忌野清志郎と仲井戸麗市に勝るとも劣らない日本ロック史上最高のケミストリーを、もう一度味わわせてほしいのだ。

「俺、今年の3月(17日)で43(歳)になるな……死ぬよ」
「おかしいもん。だってさ、俺、シド(ヴィシャス)の倍生きてるんだよ。シドがあそこで全部やめて、オギャーッ!って生まれたとしても、もう一回やりなおせたんだよなあ。俺の年齢だと。」
なんてこと言わず、ローリング・ストーンズやザ・フーの年になるまで曲をステージを続けて欲しいのだ。

ちなみに、彼の最近のブームは真空管アンプキットをつくることだそうで、プリアンプ、モノアンプ、CDプレイヤーも真空管のキットでつくり、
「最近よくやるのがね、昔のブルースってモノラル録音でしょ。だからスピーカー2個いらないんだよ。一個のスピーカーを鳴らして、正面で聴くと、もうその場から動けなくなるよ! (中略)それこそロバート・ジョンソンとか聴くと、もうたまらんよ」
「(ロバート・ジョンソンの『キング・オブ・デルタブルース』は)全部があるんだよ、そこに。だから豪華なの。贅沢」
「バンドって、ロックンロールって、いろんなレコードがあるけど、それはロバート・ジョンソンの一部のような気がしてるくらい、全部ある」
この人は本当に音楽が好きなんだなあ。ぼくも真空管アンプキットをつくってロバート・ジョンソン聴いてみようかな。そういえば、音楽グッズ販売サイト「PGS音楽市場」でハイロウズのグッズが販売されているのだ。限定のようなので、手に入れたい方はお早めに。

「音楽と人」4月号は上記の対談のほか、ヒロトに緊張してちゃんと話ができなかった峯田くんのジョニー大蔵大臣(水中、それは苦しい)とのリラックス対談や、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ULTRA BRAiN、トータス松本などへのインタビュー、吉井和哉のライブレポートなど盛りだくさんな内容なのだ。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.