「スター・トレック」のオリジナル・キャスト、カミングアウトを語る。

2005/10/31 12:40 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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1966年にテレビ・シリーズとして始まり、その後現在に至るまで世界中で人気のSFドラマ「スター・トレック」。アメリカ人にとっては作品自体もそうですが、それを取り巻くファンなどを含め、カルト的な位置づけをされされている特別な存在です。番組冒頭のウィリアム・シャトナー氏による有名なナレーション "Space: the final frontier. These are the voyages of the starship Enterprise……" というのを、暗記している人は、一部世代にはまだまだ沢山いるはずだ(笑)。

23世紀の宇宙を舞台に、惑星連邦に所属する宇宙艦隊 NCC-1701のエンタープライズ号が未知の宇宙空間を冒険の旅に……。このストーリーの番組は、当時のアメリカがアポロ計画の進行中だったこともあり、爆発的人気となりました。しかし驚きなのはその後もずっと熱狂的なファンを持ち続け、映画化はもちろんアニメ化、テレビでも次々と新しいシリーズで長寿番組となる息の長さ。本当にこの原動力はどこから湧き上がってくるんでしょうねぇ?

ところでオリジナル・シリーズの登場人物たち「キャプテン・カーク」(彼を演じたウィリアム・シャトナーは、今年のエミー賞で助演男優賞("Boston Legal")を受賞)、「ミスター・スポック」(レナード・ニモイ)、「ヒカル・カトー・スールー」(ジョージ・タケイ)などは、熱狂的「スター・トレック」ファンの間ではカルト的に崇められているキャストたちです。その中でもジョージ・タケイ氏は日系人という事もあって、日本でもなじみのある人物かと。

タケイ氏は1938年、カルフォルニア州のロスアンゼルス出身。第二次世界大戦中は、多くの日系アメリカ人と共に強制収容所での生活を経験したそうです。カルフォルニア州立大学に在学中演劇を学び、映画の吹き替えなどを経て、スタートレックのスールー役で大ブレイク。また「全米日系人博物館理事長」としても活躍し、日系人の地位向上、また日米間の文化交流に寄与したとして、その功労が称えられ昨年には日本国勲章(旭日小綬章)を授与されたそうです。

ところでこのタケイ氏、最近ゲイ・レズビアンのためのコミュニティ誌「フロンティア」にて、自分がゲイであるとカミングアウトして話題になっています。数年前から彼がゲイであると噂にはなっていたそうですが、今回正式にゲイであると名乗り出て、社会的にも議論を巻き起こしたいと考えたのだとか。

戦時中は日系人であることを恥ずかしく思い、さらに思春期になって自分がゲイであると自覚しそのことに対しても精神的に苦しんだというタケイ氏。ゲイ・カップルの結婚が政治的に話し合われるようになった今「本当に時代が変わったんだな」と実感しているそうで、同誌では18年間ゲイのパートナーと生活していることも発表しています。

もちろん同性愛者に対してはいまだに差別的、閉鎖的なアメリカ文化。それでも、タケイ氏のように長年自分のアイデンティティーを隠してきた人物が、今それを声高らかにいえるというのは、社会は新しい方向に進んでいるという証拠かもしれません。人種差別が今では非人道的だと考えられているのと同様に同性愛者に対する偏見も、タケイ氏の言葉をそっくり借りて「アメリカの価値観に反する行為」であると認められる日を、彼を含めて世界中の同性愛者が願っているのではないでしょうか。

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