体質遺伝情報を示す「ハプロタイプ地図」が完成。

2005/10/27 09:01 Written by コジマ

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全遺伝情報(ヒトゲノム)のなかで、特定の病気にかかりやすいなど、人が生まれつき持っている体質を決定する遺伝情報がどこにあるのかを示す「ハプロタイプ地図」が、日本、米国、英国、カナダ、中国、ナイジェリア(今回の研究には不参加)の研究者らが参加する国際HapMap計画の研究チームが完成し、27日付の英科学誌ネイチャーに発表されるのだ。

遺伝情報を表す塩基という化学物質の並び方の1か所が異なる部分(一塩基多型;SNP)があるのだけれど、このSNPは、99.9%がだれでも同じとされるヒトゲノムの残り0.1%のなかに散らばっており、それが個々の体質などを決定するとされているのだ。この解明には膨大な時間と費用がかかるとされていたのだけれど、研究チームはSNPが複数集まってブロック単位で遺伝していくことに着目して、ブロック内の一部のSNPを調べるだけで残りのSNPの機能も推測できることを突き止めたのだ。このブロックはハプロタイプと呼ばれ、これが地図の名前である「ハプロタイプ地図(HapMap)」の由来となっている。

これによって、アジア人の場合、1000万個あるSNPのうち25万個を解析するだけで98.5%の精度で個人差を特定できることがわかったのだ。また、人類の起源であるアフリカのホモサピエンスが世界にどうやって広がっていったかも解明できるようになる。

日本からは理化学研究所、東京大学、北海道医療大学、ユウバイオス倫理研究会の研究者や文部科学省が参加している国際HapMap計画は、今年2月から330万ドルの予算でハプロタイプ地図の作成に取り組んでいるのだ。3月には第一段階として4つの民族グループ特有のSNPを突き止めていた。

SNPの解明が進めば、例えば他人と同じものを食べていても太りやすいとか、たばこを吸うと人より癌や呼吸器疾患にかかりやすいなどの興味深い情報だけでなく、いくつかのある治療薬のなかでどれが一番効くかという治療上とても重要な情報が、遺伝子を調べるだけでわかるようになるのだ。今回はハプロタイプ内にある重要なSNPのヒトゲノム上での位置を示しただけで、個別の病気へのかかりやすさがどこの場所に関連しているかは明らかになっていないのだけれど、個々の体質に合わせた治療として話題の「オーダーメイド治療」の実現に一歩前進したのだ。

医療を受ける側にとって非常にありがたい遺伝子解析やオーダーメイド治療も、常に倫理観や個人情報のセキュリティー問題がつきまとう。しかし、これらの治療を待ち望んでいる多くの重症患者のためにも、倫理観や個人情報を勘案したうえでこのすばらしい治療が選択できるようになることが望まれるのだ。

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