イエス・キリスト氏の「引っ越し」受難。

2005/05/09 13:36 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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以前Narinari.comのコラム「名前を変更する権利、オークションに」でも話題に挙げましたが、アメリカでは実に簡単に氏名の変更が可能なのです。コレといった特別な理由も必要なく、簡易裁判所に出向いて

「こういう名前に変更したいので、よろしく」

とばかりに改名証明書を発行してもらい、それを元に公的な書類(運転免許証や銀行の名義)などを変えればそれでOK。日本のように戸籍制度のない米国では、役所などの公的機関に変更を届け出る必要もありません。

もちろん詐欺などの犯罪行為が目的だったり、既に存在する同姓同名の個人(著名人など)の権利を侵害するような場合は許可されません。はたまた下品だったり人々が気分を害する可能性がある時も裁判所の裁量しだいで許可されたり、されなかったりだそうです。

そこで登場するのが今回の男性。最近ウエスト・ヴァージニア州に引越しをしたこの方、以前住んでいたワシントンDCで15年も前から「イエス・キリスト」と名乗っていました。そして今ではパスポート、ソーシャル・セキュリティー(米国民年金)証明書、運転免許証など全てにこの名前が使われているのだそうです。

ところでアメリカでは運転免許証は州ごとに違うものが発行され、他州に引っ越した場合は、そこで新たなライセンス・カードを取り直さなければなりません。そこでイエスさんもウエスト・ヴァージニアの免許証を発行してもらおうとしたのですが……。

実はイエスさん、法的にはまだ氏名変更が正式に完了していなかったのです。キリスト教徒の多いアメリカでは、この名前を軽々しく名乗っては問題だと、数年前にDCの裁判所からは申請を却下されていました。それでもこの「通称」を使い続けていたのです。今回も新しい免許証にこの名前を記載しようとしたのですが、ウエスト・ヴァージニア側はそれを拒否。出生証明書にある「ピーター・ロバート・フィリップスJr」が正式な名前であるとしました。

ただしワシントンDCの管轄では、イエスさんが裁判所の判決に上告をしており、判決の見直しが近く行われる予定。もしDCで変更の許可が出れば、他州でもその決定は尊重されるので、今後これが「正式名」としてライセンスに記載される可能性もないワケではありません。

ちなみになぜ彼がこの名前を名乗っているのか、その理由ですが。なんでも信仰に対する誠実さを表すためなんだそうです。

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