マグワイヤ、ステロイド使用の言及を避ける。

2005/03/18 14:30 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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元セントルイス・カージナルスのマーク・マグワイヤ。1998年のシーズン中に元シカゴ・カブスのサミー・ソーサ(現フィラデルフィア・オリオールズ)と繰り広げたホームラン打数争いは、野球ファンが近年最も熱狂した出来事のひとつだったといえましょう。あの70号ホームランを放った3年後、膝の故障が直接の原因となって引退を表明したマグワイヤですが、現役を退いてからはメディアにもあまり登場せずひっそりとしていました。「私生活をのんびり家族と暮らしたい」という言葉を本当に実行していたようです。

が、そんな「普通の人」を目指していたマグワイヤ。不本意ながら最近またメディアの前に登場せざるをえませんでした。数ヶ月前に出版された元オークランド・アスレチクスのホセ・カンセコによる、大リーグの薬物使用に言及した暴露本(原題"Juiced" 「薬漬け」の意)が発端です。米下院の政府改革委員会がこの問題に着手し、17日朝(アメリカ時間)から公聴会を実施しました。その場でカンセコの著書でステロイドを使用したと名指しされたマグワイヤ、ソーサ、ボストン・レッドソックスのカート・シリングなどそうそうたるメンバーが証言台に立ったのです。

アメリカでは今、ステロイド使用はプロの選手だけに限らず、アマチュアの若いアスリート間にも深刻な問題となっています。ステロイド投薬の後、うつ病になり自殺した大学選手や高校球児らがニュースでも取り上げられました。これらの遺族が、今回の公聴会で選手らが証言する前に、薬物使用を厳しく取り締まるように訴えました。

薬物を使用したと「暴露」された選手たちは全員、本が発売された直後にそれを否定。今回の公聴会でもソーサを含む数名が証言台にて完全否定しました。ところが、マグワイヤにいたっては次のようなコメントを最初に読みあげた後、一切言及を避けたのです。

「否定すれば信じてもらえないだろうし、肯定すれば軽蔑されて、さらに今後の捜査対象にもなってしまう。弁護士との相談の上、自分の過去については一切証言しないつもりだ」

公聴会は裁判と一緒で、嘘の証言をするのはもちろん違法です。自分に不利な事実には、黙秘権のお蔭で口を閉ざすことが出来ますが……。しかしだからこそ、マグワイヤは公の場でステロイド使用を認めたようなものですね。大体無実なら弁護士なんかも雇うわけがないでしょうに。

上のコメントの後も、何度も「過去のことは言わない」、「ここには自分の過去を語りに来たのではない」と繰り返すだけ。最後はかなり口調が重くなっていたような気がしました。彼をヒーローとして称えるセントルイスのファンも、これはかなりの衝撃。地元テレビの街頭インタビューでも、かなりの人たちが「失望した」と答えていました。

今後政府議会が球界の薬物取り締まりに、どう関わっていくのかはまだわかりません。でも青少年の薬物汚染を危ぶむ議会側は、かなりのプレッシャーをかけてくることでしょう。マグワイヤのように引退した選手が過去に達成した記録も、もしかしたら帳消しにされてしまう……なんてこともありえるかも知れませんねぇ。

ウォール真木としては、マグワイヤを応援していただけにショックが隠しきれませんです、本当に(涙)。

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