映画「生きてこそ」、実在モデルの所持品がアンデスで見付かる。

2005/02/19 13:11 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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(このコラムは映画のネタバレが含まれておりますので、10年以上前の作品とはいえ、一応ご注意くださいませ……)

1993年に公開された「生きてこそ」(原題 "Alive")。実際にあったショッキングな出来事を映画化した作品として、当時話題になりました。

時は1972年10月。南米ウルグアイの学生ラグビー・チームの選手一団とその家族、合計45名が遠征のためにチリ行きの飛行機に乗りこみました。しかしそのフライトの途中、パイロットの操縦ミスからアンデス山脈で墜落してしまうのです。直後に救助隊が出されたものの、視界の悪い冬山では生存者おろか、機体さえも発見できませんでした。そして雪深い山中での生存は絶望的と、10日後には捜索が打ち切られることに……。

ところが2ヵ月以上も経ったある日、山のふもとに2人のやせ細った青年が、ぼろぼろの身なりで現れました。彼らを見付けた村人が話を聞いてみると、とても信じられないことを口にしています。なんと彼らはあの墜落した飛行機の乗客で、山の中にはまだ生存者がいる。そして彼らを救助してもらうために、命がけで下山して来たのだと言うではありませんか。半信半疑のまま、警察に連絡。捜索ヘリコプターが2人の言う場所をくまなく探してみると、確かにいたのです。過酷な寒さの中で生き残った人々が!

一面雪だらけで、食料も無い山中で一体彼らはどうやって生き延びたのか。その事実は衝撃的でした。墜落の衝撃を生き延びた何人かは、救出隊の存在をラジオで聞いて知っていたそうです。飢えと寒さに耐えながらも、絶対に見付けてくれると信じていました。しかし10日後にその捜索が打ち切られたことをニュースで聞いた時、彼らは絶望の中、生きるために辛い選択を強いられました。

自分たちが自力で埋葬した友人や家族の遺体を掘りおこし、その肉を食べることで生き延びる道を選んだのです。そして暖かくなるのをじっと待ち、体力の一番残っている2人を選んで、決死の下山を実行させたのでした。そして最終的に16人が生存しているのが発見されたと……。

ウォール真木も、映画を観る前に原作を読んだんですが、さすがに最初は驚きました。でも読み進んでいくうちに、この話はカニバリズムがメインとなっているストーリーではないと感じました。彼らが過酷な経験の中でも信仰心を忘れず(実際みんな相当なクリスチャンだった)、強い精神力で行き抜いたヒューマン・ストーリーなんだなぁと。なので、読み終えた後の余韻にショッキングさはありませんでしたね。映画の方も、エンディングに流れる「アヴェ・マリア」に最高に感動したっけ……。

なにはともあれ、30年以上も前のこのお話。そろそろ歴史の中のひとつの出来事として埋葬されてもおかしくないのですが、なんと今回この生存者の所有物がアンデスで発見されたのだそうです。アメリカ人の登山家が、偶然見付けたのだそうで、財布、カメラのフィルム、ジャケットなどが32年ぶりに持ち主に帰ることになりました。

その当の所有者、エドゥワルド・ストラウチ氏はこのニュースを聞いて、大変驚いたそうです。そして、あの時の記憶が蘇ってくるようだ、と感無量に語っているとか……。

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