中国の旅行誌に変化 「普通の日本」を紹介。

2004/05/25 02:57 Written by コジマ

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ここ数年、中国の経済は長足の進歩を遂げており、庶民生活の向上が連日のようにニュースで流れている。まあ、これは都市部だけだと言われているけれど、いわゆる中流階級の増加は、かつてわが国がそうだったように衣料、電化、自動車などの産業の発展を後押しし、海外旅行をする人も年々増えているよう。そんな中国の旅行雑誌で、紋切り型の観光案内を掲載するのではなく、ある変化が生まれているそうなのだ。

asahi.comによると、32万部を発行している主要旅行誌『時尚旅遊』の最新号では、グラビア+別冊ガイドブックで15ページにわたって京都を特集しているそうだ。内容は観光ガイドのほか、季節の変化を愛でる人々や風流な土地の人のコメントなどが掲載されている。他の有力旅行誌も、こぞって日本の文化や感性、庶民の生活を重視した記事を取り上げているらしいのだ。

ぼくは横山光輝さんの漫画『三国志』を読んで育ったものだから、近代以降の中国人と日本人のイガミ合いはとても悲しくツラいのだ。こうした背景には、おもなもので第二次世界大戦時の日本の行為や中華思想などのほかに、中国政府(共産党)の情報統制も大きく関与しているのではないだろうか。政府間の争いは仕方のないことだけど、国益を超えた部分でもっと仲良くできないだろうかと思っていたぼくにとって、これはとても嬉しいニュースなのだ。経済発展の思わぬ副産物。政府の押しつけるイメージを、庶民が疑い、そして行動し始めているのかもしれない。

以前、陳舜臣さんの『日本人と中国人』を読んで、「日本人と中国人は決して分かり合えない」という言葉に愕然とした思い出がある。陳さんは続けて「両国人は相手の国の○○さんは好きというような、個人同士が仲良くなることはあるだろうけど、文化を分かり合ったり民族的に仲良くなることはありえない」というようなことを述べている。たしか(笑)。日本で生まれ育った著名な文学者が言ってることなのだから、これはきっと揺るぎないものだろう、と落ち込んでいたのだけれど、今回の記事にある編集たちのコメントを読むと、「うむむ、やっぱりそんなことないぞよ」と少しだけ勇気がわいてきたのだ(以下、asahi.comより)。

「いまの中国では多くの人が目の前の利益を得るのに非常に焦っている。しかし、京都には『水、静、慢(ゆっくり)、美』(の世界)があることを、私たちは見た」
「中国の人々は現在の日本や普通の日本人をあまり知らない。(記事を書くにあたり)いまの日本、日本人を伝えることに力を入れている」
「旅行誌は衣食住、レジャー、流行など普通の生活に密着していて、あえて言えば政治や外交よりはるかに身近に感じる分野である気がする。旅は文化であり、お互いを理解するための重要なフィルターだ」

日本にいる中国人のイメージは決していいものばかりではない。ニュースを見ていると中国人の犯罪も少なくないようだ(この辺はマイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』の内容とリンクしているような気もする)。だけど、イメージではなく、ありのままの相手を見ることが欠けているのではないだろうか。中国が歩み寄っているのだから、ぼくらも歩み寄らなくては。あなたは「今の中国」を知ってますか?

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